はい!現場の大恵です

誰かの「大切な馬」

本日をもって8名の調教師と2名の騎手が引退されました。

調教師の方々とは取材でお世話になることも多く
様々な出来事が心に残っているのですが、その中から西浦勝一調教師のお言葉を。
コロナ禍以降、直接お会いする機会はなくなってしまったのですが
年明けの電話取材の時、「一番の思い出は?」と伺うと、こう答えられました。

「競馬場に入って馬と生活ができて、こうして定年を迎えられる、これが一番の思い出です。
馬と出会えたからドバイや香港など世界中に行けて
いろんな人と出会うことができました。
世界トップのオーナーたちと競馬のことで話ができて、喜怒哀楽を一緒に味わうこともできました」

馬によって見える景色が広がったことを話し、
さらに、こう続けました。

「大恵さんとこうして話せるのも馬のおかげ。
馬がいなかったら、こういう取材を受けることもなかったからね」

西浦調教師とお話する機会がより多くなったのは
個人的に応援していたある未勝利馬がきっかけでした。

「こないだちょっと見せ場ありましたね!」
とトレセンで調教の合間に話しかけると
話はどんどん広がって牧場の話、血統の話、昔の競馬場の話
そして時には私の不規則な食生活の改善法など(!)
たくさん勉強になることを教えていただきました。

その馬は結局、初勝利を挙げることができないまま引退してしまいましたが
私の中では「西浦調教師との懸け橋をつくってくれた馬」として大切な存在です。

それをお伝えすると

「1頭1頭、縁があるから私の元に来て、そこから人との輪ができていきました。
いろんな思い出がありますね」と。

優勝劣敗の世界なので、GIや重賞を勝つ馬がスポットライトを浴びるのは当然のこと。
しかし、ひっそりと引退していった馬たちも
どこかで誰かの「大切な馬」だったんだろうな、と思いを馳せます。

西浦調教師に最後にお会いしてお礼を言えなかったことが心残りですが
それは多くのファンや関係者のみなさんも同じ思いでしょう。

まだまだ不安な世の中ですが
これからもお元気で過ごされることを心より祈っております。