前田幸治オーナーに聞く

第80回日本ダービーにて14万人近い観客の中、東日本大震災の復興支援の合言葉と同じ名前を名付けられた『キズナ』がファンの期待に見事応え勝利しました。

人と人、人と馬の夢を繋いだ『キズナ』でダービーを初勝利された前田晋二オーナーにお話を伺いました。

蹄


―― あらためまして、ダービー制覇おめでとうございます。様々なところで、ご質問を受けていると思いますが、ダービー勝利のご感想をお教えください。

「嬉しい」の一言ですね。また沢山の方からお祝いの言葉やお花をいただいて、とても感謝しております。
ダービー終了後、何日か後に会社に優勝カップが届いたんです。その時も嬉しくて、その場で箱から出して、会社のみんなと記念写真を撮りました。
実感としては、取材や祝勝会などで、ダービー後はかなり忙しくなりました。
また、街中でも声をかけて祝福してくださるファンの方もおられ、やはりダービーは特別なレースだと感じました。

―― キズナについてお伺いします。やはり誕生時からかなりの期待をかけられていたのでしょうか
「いい仔が産まれたよ」と電話で聞きました。ディープインパクトの子でファレノプシスの姉弟ということで当然期待の存在でした。
当時、私の馬があまり走らなかったからって…(笑)、デビュー1ヶ月前に、兄が薦めてくれて私が所有することになりました。兄のおかげです。本当に感謝しています。
いつも兄が薦めてくれても断ったりすることもあるのですが(笑)、でもキズナの時は素直に「ありがとう」って言いました。
私自身、競馬場に足を運ぶ方ではないのですが、キズナのレースは全て競馬場に応援に行っています。やはり自分の中で期待度が高かったのでしょうね。
―― 強さももちろんですが、その名前も人気の秘密だと思うのですが馬名についてはいかがですか。
キズナという名前は兄がつけました。本当に良い名前で最初、馬名を聞かされた時に「すごくいい!」と思いました。大変気に入っています。
今回、ダービーを勝たせていただいて、あらためて兄との兄弟の絆はもちろん、関係者や家族同様の社員、応援してくださるファンの方々との絆を感じています。
―― デビュー前やデビュー当時はどのような印象でしたか
私が初めて直接キズナを見たのはデビュー戦の時なんです。
牧場からは、すごくヤンチャという情報は聞いていましたが、実際初めて会いに行ったデビュー戦のパドックにキズナがいなくて…。パドック入場前に落鉄をしてしまい周回しておらず、パドックでも会えなかったんです(笑)。
そんなヤンチャなキズナのデビューもしっかり勝ってくれた佐藤哲三騎手はすごいと思います。彼が一緒に育て上げてきたと言ってくれてました。
―― 初戦・2戦目と順調に勝利したキズナですが、オーナー自身ダービーを意識したのはいつごろでしょうか
正直なところ、新馬戦や2歳戦ではやはりまだまだ判らないものですね。
もちろん期待度は高い馬でしたが、本当にダービーを狙えると感じたのは弥生賞のレースの時です。その前のレース(ラジオNIKKEI)は先行馬を捕らえることが出来ずにがっかりしましたが、弥生賞は敗因がハッキリしており、タイム差もなく、『これなら!』と思いました。
―― 弥生賞敗戦後、続く毎日杯を見事に勝利し皐月賞への出走という選択肢もあったかと思うのですが、その辺りはいかがですか。
弥生賞の後、陣営の意見が一致し、ダービー一本に照準を合わし、毎日杯から京都新聞杯に進むことに決めました。
結果的にも京都新聞杯をきっちり勝つことができましたし、また相性が少し心配な中山で無理に勝負するより、東京で勝負しようと決めたことは良かったと思っています。
―― ダービー当日を迎えた当日の心境はいかがでしたか
やはり気持ちが高ぶっていたのか、朝はかなり早く目が覚めましたね。競馬場には1レースから行きました。
当日は、大応援団になりましたが、多くの関係者が東京競馬場に駆けつけてくれて観戦させていただきました。
その日の7レースに家内が名付けた『アイディドゥイット』(英)「やったー」という意味の所有馬も出走していました。ダービーで「やったー!」となれたらという思いも持ちながら応援していました。
―― 強豪を抑えての1番人気でしたが。その辺りはいかがでいたか
ダービーは1番人気の成績が良いと聞くので、素直に嬉しかったです。
今回は『1』という数字に縁があって、一番人気の1枠1番、家内の誕生日が1月11日ということもあり『1』はラッキーナンバーなのかもしれませんね。
―― 当日のキズナの調子はいかがでしたか
パドックで脚けりがあって少し心配したのですが、佐々木調教師から調子の良い証拠と聞き安心しました。
―― レースを振り返っていかがですか
位置取りが中段少し後ろくらいかなと思っていたのですが、思ったより後ろからでした。18頭立てだったから、内心ヒヤヒヤしていました。
本当に最後の最後、差し切るまで気が抜けませんでした。最後は自分の馬しか見えてなかったです。
ゴールした瞬間は、それこそ「アイディドゥイット」(やったー!)です(笑)

レース後は、一緒に観戦していた沢山の応援団の方からお祝いの言葉をいただきましたが、実は、佐々木調教師や武騎手と何を話したかを余り覚えていないんです。表彰式では(緊張で)足が震えていました。

―― レース後のキズナの様子はいかがですか
現在、鳥取県にある大山ヒルズで放牧されています。
ダービー馬になったことで、牧場での扱いも変わってしまいそうですが、私は甘やかすのは馬にとっては良くないことだと思っていますので、今まで通り接してもらう様にお願いしています。
―― 今後の展開について教えてください
各報道通り、ニエル賞から凱旋門賞に挑みます。
検疫や向こうでの厩舎など国内のレースとは違う面も多々ありますが、佐々木調教師や厩舎スタッフにお任せしています。
レースに関しては、向こうの馬場は聞いた話だと京都競馬場に似ているとの事ですのでキズナは十分対応可能だと思っています。
―― キズナの凱旋門賞はもちろんですが、前田オーナー自身の目標というものはありますでしょうか。
いつも私が目標にしているのは、未勝利を脱出すること。
今年はキズナを含め調子が良いですがこれが中々難しいんですよ。

そしてこれは目標というより夢ですが、今回のダービーとノーリーズンで勝たせていただいた皐月賞と併せて、残る菊花賞をとって3冠全てを取りたいです。
今回、ダービーを勝つことができましたのも兄のおかげで、本当だったら兄を先にダービーオーナーにさせてあげたかったと思っています。これが正直な気持ちです。
―― 最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。
今年は国内でレースができるかどうか判らないですが、凱旋門賞でファンの皆様に良い結果をご報告したいと思っています。
今後ともご声援宜しくお願いいたします。


取材:大惠陽子

ページの上部へ