前田幸治オーナーに聞く

ドバイワールドカップへの挑戦

昨年の日本馬のワンツーフィニッシュ、トランセンドの惜敗から一年、今年も果敢に挑戦をされましたが、終始厳しいマークで残念な結果となりました。
昨年のドバイでのレース、そして日本でのトランセンドのこれまでの走りを見れば、彼が先行を望むであろうことは、どの陣営にも明らかであったと思います。ですから、簡単には先行させてもらえないであろうことや、徹底した厳しいマーク、プレッシャーを受けることは、こちらとしても想定内のことでした。
幸いなことに、輸送も順調でドバイに到着してからのトランセンドの状態も良く、調教も順調に行うことができました。ですから、簡単で無いレースであると重々承知していながらも、それを乗り越えて彼らしい走りを見せてくれることを心から望んでおりましたが、気持ちの問題だったのか、最後は走ることを止めてしまいましたね。多くのご声援をいただいておりましたのに、明るいニュースを届けられず残念に思っています。
他の出走馬、特に日本馬のライバル達に対して、何かお感じになられたことなどございますか?
他国の出走馬については、やはりそれぞれの国を代表して出走してくる強豪揃いですから、どの馬も強力なライバルだと思っていました。日本馬については、これまでに何度か戦ってきた相手ですからお互いに手の内もわかっている部分もありますし、日本でレースに臨む気持ちと変わりありません。しかし、このような大きな舞台になると、相手の出方云々というよりも、トランセンドの場合は特に「自分のスタイル」を貫けるかという点が重要であったように思います。

レースを終えた今、レースを振り返って、今回の挑戦で感じられたことなどありましたらお聞かせください。
レースの結果については、非常に残念であったとしか申し上げられません。
また多くのファンの皆さんのご声援に応えることができず申し訳なくも思っています。
毎回のことですが、海外遠征には多くのスタッフの協力と団結が必要になります。今回もトランセンドの挑戦に際し、安田調教師や厩舎スタッフ、そして様々な手配や準備をしてくれたコーディネーターの尽力に、心から感謝しています。また私共からも獣医とスタッフが同行しておりました。「チームトランセンド」が、世界の大舞台に大きな期待とチャンスを持って臨めたことは、オーナーブリーダーとして誇りに思うところですが、やはり結果を伴わねばならない厳しい勝負の世界です。この敗北を糧にして、ここから学び、また新たな挑戦に繋げていきたいと思っています。

これまでを振り返って

ドバイのみならず、これまでにも数々の世界への挑戦を繰り広げてこられました。 それぞれのレースについてご感想をお伺いしたいところですが、オーナーは特に印象に残っているレースなどございますか?
ドバイへの初挑戦は、2001年のレギュラーメンバーでしたね。それから、アメリカにグレード制が設けられて初の日本生産馬の優勝馬は私どものサンデーブレイクでした。(2002 ピーターパンS・GⅡ)
ローブデコルテのアメリカンオークス(2007)では、レース中に鼻出血を発症するなど、トラブルに見舞われたこともあります。昨年のドバイワールドカップでは、世界一の栄光があともう少しというところまできました。まだ海外での勝利は1勝だけなのですが、馬にそのレースへの適正があると判断し、勝機があると思えば、世界の大レースにこれからもひるむことなく挑戦し、大きな喜びを得たいと思っています。

これからの、「世界への挑戦」について

今後予定されている出走レースなど、具体的なプランはお持ちですか。
まだはっきりと決まっているプランはありませんが、私には勝ちたい世界のビッグレースがありまして、それはケンタッキーダービー、ブリーダーズカップ、凱旋門賞、ドバイワールドカップの4つです。日本のダービーもまだ手にしていないのに、大きな夢のように思われるでしょうが、夢は大きいほうが叶えた時の喜びも大きいでしょう。期待を持てる馬が現れたら、どんどん挑戦していくつもりです。
前田オーナーは、「生産育成の面においても競馬先進国に」と語られていますが、具体的にお聞かせください。
日本競馬の水準は世界でも高いレベルにあると思います。パートⅠ国に選ばれたことでもそれは証明されていますね。日本馬が世界のレースで活躍し大きな勝利を手にすることも珍しくなくなりました。JRAが誇る競馬場やトレセンなどの施設、賞金の高さなどは、海外のホースマンには賞賛していただくほどです。しかしながら、生産や育成(外厩)に目を向けると、強者と弱者が大きく二分化されてしまっているように思います。資本の問題もあるでしょうが、規模が小さい者同士協力して共同体として活動をするとか、新しいことに挑戦する意欲や向上心を持ち続けて、海外にも見識を深めに出ていくような努力も必要だと思います。

オーナーの考える「競馬の国際化」とはいかがなものでしょうか。
パートⅠ国となったことで、外国馬、外国産馬のレースへの出走、外国人の馬主登録、外国人騎手の受け入れなど、世界に対し門戸を開放せねばならない点は多々あります。
私達も、世界のレースに日本馬で挑戦を望んでいるのですから、双方向になるのは当然のことでしょう。また日本人騎手が海外のレースに活躍の場を求めるのと同様に、世界中の騎手が日本競馬にやってくるのも否定できません。ですが、私の考えとしては、門戸を解放することだけが国際化ではなく、日本競馬を育て発展させることも国際化の一部だと考えています。短期免許で滞在する世界の一流騎手に騎乗させたいという、馬主や調教師の思いも、もちろん理解できるのですが、特に若駒のレースだと、次のレースに繋がるように馬にレースを教えることも騎手の重要な役割だと思うのです。この1回を勝てばいい、というような鞍上の決定の仕方には疑問を覚えますし、またそのようなことが続けば、若手騎手の育成にも弊害が出るでしょう。日本競馬を守り育てながら、世界と交流していく、そのバランスは難しいと思いますが、競馬界全体が意識を持ち続けていることが重要ではないでしょうか。
また、JRAには、日本馬や日本人騎手が世界に挑戦しようとするときには、出来る限りの支援をお願いしたいと思います。補助金助成のルールには厳しいものもあり、挑戦を躊躇する要因にもなりかねません。日本競馬の発展と促進、守り育てながら世界へ発信していくことを、競馬界全体で考えていかねばならないと思います。
最後に、トランセンドのように海外レースに愛馬を挑戦させようする馬主の方達や、競馬ファンの皆様にメッセージをお願いいたします。
日本馬のレベルの高さは今や世界レベルです。レースに出走することに意義がある時代は終わって、勝つためにレースに臨む時代だと思います。過去何十年にも亘り、先人達が数々の戦いに挑み、勝利や敗北から得てきた経験を、私達も学び、馬の適性、適レースを見極めて果敢に挑戦して欲しいと思います。
ファンの皆様には、トランセンドに温かなご声援をいただき本当にありがとうございました。国内のレースでもファンの皆様に興奮や感動をお届けできるよう、これからも、強い馬づくりを目指して日々邁進してまいります。より一層の競馬界への温かなご声援をよろしくお願いいたします。

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