はい!現場の大恵です


実況

先週行われた菊花賞は
コントレイルが父ディープインパクト以来の無敗の三冠馬に輝くという
素晴らしい瞬間を見ることができました。

今年はクラシック戦線をまったく取材できていないので
現場の空気感は分からないのですが
実況アナウンサーに取材をさせていただく、という貴重な機会を得ることができました。

いとも簡単に喋っているように感じますが
その陰には様々な努力や経験の積み重ねがあってのことなのだと改めて感じた取材。

菊花賞の実況を担当した関西テレビの川島壮雄アナウンサーは
ホープフルSでコントレイルが勝つ姿を見てから
「三冠馬になるかもしれない」と、菊花賞での実況について考え始めたといいます。
緊張と興奮が今から10カ月前から始まっていたのかと思うと
実況アナウンサーにも尊敬の念を抱きます。

弟は大丈夫だ!(ナリタブライアン 杉本清アナウンサー)
これが日本近代競馬の結晶だ!(ディープインパクト 馬場鉄志アナウンサー)
おめでとう、オルフェーヴル!(オルフェーヴル 岡安譲アナウンサー)

と名実況を生み出してきた関西テレビのアナウンサー方。
今年は・・・。

個人的には4コーナーでの
「三冠は果て無き夢への滑走路」
が好きです。
みなさんはどうでしょうか。

ちなみに、特技が競馬実況の石堂響騎手(地方・兵庫)も
レース前に架空実況を自身のTwitterで披露していて
こちらもお気に入りです(笑)


心拍数と名馬の関係

今週、あるスポーツ新聞に

コントレイルは走った後、心拍数が戻るスピードが
一般的な競走馬に比べてとても早い

といったことがグラフ付きで掲載されていました。

それを読んでふと思い出したのは
歴史に名を残す名馬たちも「心臓が強い」ということについて。

たとえば、JRAのGI勝利数最多タイ(7勝)を挙げたテイエムオペラオーは
競走馬総合研究所の研究で平均25拍/分(安静時)と発表されていて
一般的な競走馬の30~40拍/分よりも少なく
それだけ一回の拍動で多くの血液を全身に届けられていることが窺えます。

同じくGI7勝を挙げたキタサンブラックは
現役時、担当の獣医師が聴診器で測ったところ28~30拍/分。

よく厩舎関係者のコメントで
「この馬は心肺機能が強い」
というのを見かけますが
科学的な数値からもそれが証明されていることとなります。

キタサンブラックに関しては、実際に心拍数を測ったのは引退が迫った頃。
科学的に「心臓が強い」と分かる前から
清水久詞調教師は「キタサンブラックなら大丈夫!」と信じて
ハードなトレーニングを課し、より強い馬へと育てていきました。

競走馬の世界は科学的なアプローチと
積み上げてきた経験による「職人の感触」が合わさって強い馬を育てていることが多いように感じます。
そして、それがまた新たなドラマを紡ぎだすのだな、と。

さて、明日の菊花賞はどんなドラマが生まれるでしょうか。


牝馬三冠

デアリングタクトが史上初、無敗の牝馬三冠馬に輝きました。

レース後にグリーンチャンネルで実施される生産者インタビュー。
長谷川牧場・長谷川文雄さんのインタビューは素朴な人間味と喜びにあふれていて
桜花賞を勝った時からファンの間でひそなか人気でした。

史上初の偉業を遂げた今日のインタビューでもそれは変わらず。

「お母さんのデアリングバードは飛び跳ねたりして、うるさいんだよこれが。喜んでるんだ」

「(デアリングタクトが以前レースを勝った時、私は)膝が痛かったのがレース後は歩けるようになって
ご飯食べるよりも元気になります」

といったエピソードに、一緒に勝利の喜びを味わえている気持ちになります。

そして、松山弘平騎手は30歳ながら牝馬三冠ジョッキーになると
最終レースも勝利してJRA年間100勝に到達。

ひと昔前
「GIでは、最終レースに乗っていない騎手が買い」
なんて言われた時もありましたが
偉業達成の後も、普段と変わらず騎乗依頼を受けて結果を出す若武者の
精神的・肉体的なすごさを感じました。


機内で触れた人間ドラマ

今日から週明けまで高知競馬場でお仕事のため、飛行機に乗りました。

新型コロナウイルスの影響で航空各社が便数を減らしながらの運行。
そのためか、
あるいは昨日からGO TOキャンペーンが東京都も対象となったり地域クーポンが発行されるようになり
全国的に移動解禁ムードになっているためなのか
伊丹からのプロペラ機はほぼ満席。

窓側席に座って、乗ってくるお客さんたちをなんとなく眺めていると

「よろしくお願いします」

とお辞儀をしておばあさまが横に座ってこられました。

隣同士の席で、ご挨拶をされるなんてすごく久しぶり。
というか、ほぼ初めての出来事。

そういえば、亡くなった祖父母も似たようなことをしていたっけ・・・
とおぼろげな記憶を懐かしく辿っていました。

「ツアーでは飛行機に乗ったことがあるんですけど
1人は初めてで・・・」

と不慣れそうに離陸準備をするおばあさま。
荷物の収納などお手伝いをしながら

「ご旅行ですか?」

と聞くと

「いえ。息子が病気をしておりまして・・・。
本当ならもっと早く行きたかったんですが、コロナがあったので。
会いたい気持ち2割、残り8割はどんな姿になっているのか見るのが恐いという気持ちなんです」

とても小柄で、少し腰の曲がったおばあさまはそう答えました。

最愛の息子さんに会うことに不安を覚えるほど、病状が良くないのかもしれません。
ふと、座席下に収めた手提げカバンを見ると
大きなフェイスシールドが顔を覗かせていました。

時おり、目を潤ませながら
「いま私が死ぬわけにはいかないんです。
しばらく元気で生きていないと」
という言葉には私もこみ上げてくるものがありました。

再びコロナの感染拡大が心配ではありますが
こうして世の中が動き始めると、いろんな人間ドラマが見えてくるものですね。

高知空港に着陸し、レンタカーを走らせて向かった高知競馬・打越勇児厩舎では
きれいに身だしなみを整えた上品な女性がいらっしゃいました。

明日、高知競馬からデビューする井上瑛太騎手のおばあさまです。
元騎手のご主人とともに打越厩舎で厩務員をされていて
デビューを控えたお孫さんとの3ショットを撮影させてもらいました。

「明日はドキドキするので、自宅で見守ります」

とおばあさま。
デビュー2戦目となる高知4Rではおじいさまが馬を曳きます。

明日もまた、人を取り巻くドラマが見られそうです。