北新地競馬交友録

空気

Chinaの作家魯迅の、『阿Q正伝』と云う小説がある。
その中での有名な一節が、「水に落ちた犬は打つ」。
実際に1926年、魯迅が反革命派が占める北京を逃れ南下するときに発した言葉だ。
彼は当時の反革命派を『犬』と呼んで心底憎んでおり、反革命を掲げる『悪い人間』に対しては情け容赦をかけるべきではない、徹底的にこらしめろ!そんな意味の発言なのである。

つい先日、『水戸黄門』の5代目助さんや、刑事ドラマ『相棒』の陣川警部補役を演じる原田龍二が、複数の女性ファンと良からぬ所業に及んでいるとスクープされて大ピンチ。
その状況を何とか収拾出来そうなのは、「原田!アウト!と嫁からボコられました」発言だ。
素直な謝罪、平謝りと笑いで凌ぎ切れそうな様相を呈している。
それはそれで、なかなかどうして、したたかな危機対応力ではあるが………。

いつの頃からであろうか?有名人の倫理や道徳に背く行為は許すまじと、マスコミを筆頭に一般の人間が大合唱。
社会的に葬り去るまで止めるもんか!とのパッシングを繰り返すようになったのは。
それこそ、魯迅の「水に落ちた犬は打つ」。
階級社会が故の妬み、嫉みが生み出した不寛容な空気は、ニャンとも!気持ちが悪いではあ〜りませんかの、チャーリー浜師匠なのである。

「アーモンドアイの単勝は何倍だ?1.8か〜。なんせ先週の『ダービー』でサートゥルナーリアが普通に馬券にならねえのが競馬だからな〜。今回は海外遠征帰りのマイル。スタートもいい方じゃねえし。後方に置かれての直線一気は今の府中の馬場じゃ〜分が悪ぃ。枠が厄だがさっと前目に付けれて、確実に伸びてくる将雅のダノンプレミアムの方に気がある。発表!単勝に3万、複勝に7万でどうだ!」と結論付けたマスターだったが………。

「直線に向かい残り400!先頭はアエロリット!2番手はグァンチャーレ!アーモンドアイは中段外!ダノンプレミアムはまだ後方だ!200を切って競っているアエロリット!グァンチャーレ!インディチャンプが伸びて来る!そして来た!来た!アーモンドアイだが!インディチャンプ!インディチャンプ!外アーモンドアイ!内アエロリット!インディチャンプ先頭でゴールイン!アーモンドアイ3着に敗れました!」

1着 インディチャンプ 福永J
2着 アエロリット 戸崎J
3着 アーモンドアイ ルメールJ
最下位 ダノンプレミアム 川田J
何とか3着は確保したが、単勝1.7倍を裏切ったアーモンドアイ。
『ダービー』でのサートゥルナーリアに続いて単勝1倍台が2着も確保出来ない事態に、神戸元町ウインズは静として声なしである。

「なんなら!将雅の野郎!下馬してんじゃん。よりによって2番人気でドベとはどう云う事だ。あったま来るぜ。最低限の仕事をせい!仕事をョ!」
普段なら「にちゃんホンマやで」なんて同調する馬券愛好家達も、下を向いて無言の行に入っている。
アーモンドアイを軸にしていたとしても、3連複は安いし、3連単のマルチはガミるし、やはり馬連はたまた度胸一番の単勝であろうから、3着ではどうにもならない。
ダノンプレミアムに至っては論外で、マネー返してくれ!の結末である。

不寛容な空気が充満している昨今の我がジャパンではないが、「所詮、動物が1キロ、2キロ走って………..俺は愚か者ョ」とでも自嘲するしかないような空気が満ち満ちた神戸元町ウインズ午後4時前。
武豊Jの騎乗停止1日なんて、純な馬券愛好家には何の関係もないのである。