北新地競馬交友録

令烏白頭、馬生角

トランプ叔父さんが、肥満児のぶつかり合いを見たり、我らが安倍ちゃんとのゴルフに興じ、ご機嫌さんで日本を訪問しているところに冷や水を浴びせ掛けるような報道がなされた。
中国政府がアメリカへのレアアースの輸出を規制する可能性を示唆したのだ。
国家発展改革委員会は、「中国から輸入されたレアアースで作った製品を使用しながら、中国の発展を抑制するなら、中国の人々は喜ばないだろう」とのコメントを発表。
米中貿易交渉は更に激しさを増し、舞台は浪速のG20で正念場を迎える。
「殴られたままで黙っておれるか!」の中国恐るべし。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
お勉強の時間である。

『令烏白頭、馬生角』by 史記・刺客列伝

燕丹子質於秦。
秦王遇之無禮、 不得意欲歸。
秦王不聽、謬言曰、「令烏白頭、馬生角、乃可。」。
丹仰天歎。
果烏白頭、馬生角。
秦王不得已而遣之。

中国の戦国時代、秦の人質となって、涙、涙の日々を送っていた燕の太子丹。
秦王がある日「鳥の頭が白くなり、馬にツノが生えて来たら、国に帰してやってもいい」と意地悪。
すると、ニャンと!本当に鳥の頭が白くなり、ツノの生えた馬が目の前に現れたと云うのだ。
転じて、あり得ないことのたとえ。
また、ありえないと思っていたことが続けて起こる事を表している。

それを地で行くような事態が、『ダービー』で起こったのである。

「大一番の『ダービー』。今年は3頭立てだろう。マニーがたんとありゃ〜サートゥルナーリアの3枠から、大本線が将雅のヴェロックス7枠、圭太のダノンキングリーの4枠を押さえれば自動的に当たる。バット手元不如意で、それじゃ〜雀の涙程しか儲からねぇ。ここは一発僥倖期待で、サートゥルナーリアからの2点は元返し。タテ目の4ー7を本線に作戦変更だ」とマークシートを塗り塗りしたマスターだったが……..。

「第86回日本ダービー!スタートとしました!あっと!サートゥルナーリア立ち上がるようなスタート!出遅れです!」
「う!う!うっしゃ!30万貰った!」右腕を高々と差し上げるマスター。
サートゥルナーリアがスタートで安目を売ったとなれば、残りの2頭、枠の4ー7の期待大。
神戸元町ウインズの馬券愛好家達から注がれるシャープな視線なんて平気の平左で、逆に周りを睨め回しているのだから、相変わらず行儀が悪い。

「第4コーナーを回って残り400の攻防!先頭はリオンリオン!交わしてロジャーバローズ坂を上る!その外からダノンキングリー!離れた外からサートゥルナーリア3番手に上る!粘るロジャーバローズ!捉えにかかるダノンキングリー!追っているサートゥルナーリア!先頭ロジャーバローズ!ダノンキングリー追い詰める!2頭並んでゴールイン!3番手はヴェロックスか!サートゥルナーリア破れました!お見事!浜中俊J!日本ダービー初制覇!」

1着 ロジャーバローズ 浜中J
2着 ダノンキングリー 戸崎J
3着 ヴェロックス 川田J
4着 サートゥルナーリア レーンJ
5着 ニシノデイジー 勝浦J
「なんじゃこりゃ!淀の2200で差された馬が、府中の2400で逃げ切るんかい!横山の小倅が悪い。あげな無茶逃げするからだ。せっかくレーンが出遅れてるのに何やってだョ!」
「マスター、勝ったのがサートゥルナーリアと同厩舎角居さんとこのロジャーバローズでしょ。2頭出しは人気薄と昔から云います」は、競馬友達のK君。

「てめ〜、何が角居さんだ!知り合いでもねえのにツレみたいな物云いしやがって。2頭出しは人気薄だって?いつの話しだョ。昭和や平成じゃねんだ!今は、令和だっちゅ〜の」と激怒。
「ダービー乗り替わりに勝ちなしとも云いますね」は熊本天草出身○原さん。
「○原さん、ご立派な事云うじゃねか。馬券取ったのかョ〜?」
「…………..ハズレました」
「当たってもいねえ人間が俺に講釈垂れるんじゃねえ!」
「…………..どうもすいません」

サートゥルナーリアがまさかの出遅れ、ロジャーバローズがこれまたまさかの逃げ切り。
『令烏白頭、馬生角』ありえない事が続けて起こる。
それが競馬だと云ってしまえばそれまでだが……….何とも切ないダービーとなってしまったのである。