北新地競馬交友録

お世話になりました

『お世話になりました』by 井上 順

明日の朝この街を ぼくは出てゆくのです
下宿のおばさんよ お世話になりました
あなたのやさしさを ぼくは忘れないでしょう
元気でいて下さい お世話になりました
(お世話になりました)

男なら夢を見るいつも遠いとこを
煙草屋のおばあちゃん お世話になりました
お金がない時もあとでいいと言って
ハイライトをくれた お世話になりました

新しい生き方を ぼくは見つけてみたい
おそば屋のおじさんよ お世話になりました
将棋のにくい敵五分と五分のままが
くやしいぼくだけど お世話になりました

何にもかも忘られないよ お世話になりました
誰もかも忘られないよ お世話になりました
何にもかも忘られないよ お世話になりました
誰もかも忘られないよ お世話になりました


ロックンロール馬鹿、故内田裕也のお別れの会『内田裕也 Rock’n Roll葬』で弔辞を読んだのはマチャアキ事堺正章。
そのマチャアキとGSザ•スパイダースでツインボーカルを務めたのが井上順である。
ジンガイの様な端正な風貌が特長だったが、歌がどうかと云えばいたって普通。
今なら、そこいらのカラオケボックスで、掃いて捨てるほどいる歌好きのレベルであった。
バット!ソロになってから『お世話になりました』が大ヒット。
改めて聞くと単調過ぎて、何でこんな歌がブレイクしたのかは不明だが、人柄の良さそうな井上順の風貌と相まって、それなりの雰囲気を醸し出していたからかも知れない。

「マスター、おはようございます。土曜日は連絡がないのでどうしたのかと思ってました。生きてましたか?」は日本で3番目にオツムのいい学校を出て、堂々一部上場会社勤務のK君。
「朝から失敬な野郎だな。そう簡単にお釈迦になってたまるか。メインの『阪神牝馬S』を買うか買うまいかで迷ってる内に寝ちまって、気が付きゃ〜夕方だ。まさかラッキーライラックが飛ぶとはな〜。だけんじょ、俺ぁ何か嫌な予感がしてたんだ。助かり!助かり。普通なら片手は軽くゴミになってだぜ」

「さすがです。危険予知能力は半端ないですね。」
「まあな、今まで、天文学的損をこいてっからョ。危ねえ時は何となく判んだ。」
「素晴らしいです。その調子で当たりも予知してくださいよ。」
「それが出来りゃ〜こげいに燻っちゃいねえぜ。」
「むべなるかですね。」
マスター、もっともらしい事を云ってるが、実は大嘘である。
ラッキーライラックが飛ぶなんて、小指の先も思っていなかった。
単複は安過ぎて買えない、ならば枠連でと思ったが、相手がまるで絞り切れず敵前逃亡したと云うのが真実なのである٩( ᐛ )و

「今日の『桜花賞』はどうなさいますか?」
「うむ、内から友君のクロノジェネシス、ルメ公のグランアレグリア、将雅のダノンファンタジー、この3頭の中から頭が出るのは、芦◯崇信幼稚園ひまわり組の真司君でも判る。そん中でも俺ぁ〜ダノンファンタジーにいっとう気がある。去年の暮れ、『ジュベナイルフィリーズ』直前に、京都馬主協会会員さんが、クリスチャンを店に連れて来てくれてョ〜。そん時クリスチャンが「勝ちま〜す!自信がありま〜す!」て云うから、それに乗っかって儲けさせて貰ったからな。」

「なるほどですね。買目はどのように?」
「まともにスタートを切れば怖い、プリンスのビーチサンバ、無欲の先行策マルコメのジュランビルが同居した7枠は必ず馬券に絡む。発表!枠連!4ー7が大本線で4万、2ー7が3万、7ー7ゾロ目のまっちゃんに1万。ハマった時のデムーロも侮れねえ5ー7に8千。万が一のタテ目2ー4に1万。してから懇意にさせて頂いている馬主さんのノーワン単勝に2千でいてこます。」と結論付けた。

井上順じゃないが、お世話になりましたと、ダノンファンタジーに抱き合いを決め込むマスターなのだが………さて。