北新地競馬交友録

適齢期

ここ数年、お正月休みが終わり、2月の連休が過ぎるとある種の思いに囚われる。
「どっか旅に出たいな〜」
カナカナ蝉のその日暮らし、叶わぬ夢である。
もう5月のGWまでは連休がない。
そんな時、必ず手に取るのが、随分とくたびれてしまった沢木耕太郎の『深夜特急』。
香港、バンコク、デリー、そしてヨーロッパ。
バスだけを使っての一人旅。
もう、何度読んだのかは定かではない。

そんな『深夜特急』に付随する書籍もなかなか興味深い。
『旅する力』の中で沢木耕太郎は綴る。
紀行文で重要なのはアクションでなくリアクションである。
どんなにささやかな旅であっても、その人が訪れた土地やそこに住む人との関わりを、どのように受け止めたか、反応したかが大切だ。

更に、旅に移動は必須の条件だが、移動そのものが価値を持つ旅はさほど多くない。
大事なのは移動によって巻き起こる風なのだ。
もっと正確に云うならば、その風を受けて、自分の頬が感じる冷たさや暖かさを描く事なのだと。

その『旅する力』の中で、もう一つ印象に残っている下りがある。
旅には適齢期と云うものがある。
旅を続けられる最低限の人生の経験と、新しい事に遭遇し興奮し、感動出来る未経験さが同居しする年齢。
それはいみじくも沢木耕太郎が、『深夜特急』に飛び乗った26歳なのではないのかと。

にゃるほど、旅には適齢期があるのかも知れない。

「マスターさん、おはようございます。先週は反省会が出来なくて寂しかったです。先に帰っちゃうんですから。」は、熊本天草出身○原さん。
「悪ぃ、悪ぃ。なんだか外れまくりで人と話すのが億劫になっちまってョ。オメー達も俺がしかめっ面してたら気を遣うだろ。」
「そんな時こその仲間じゃないですか」
「うん、それは判ってるしありがてぇ。パッとしねえ時に寄って来て来れる人間こそ、真の友だとは判ってからョ。な〜に、チイとばかしへこたれたが、張るタマならまだ残っとるけんの〜故菅原文太兄いだ」

「今日の狙い目は?」
「阪神5R。関東から遠征して来た2頭に気がある。将雅のボストンテソーロとルメ公のパイロテクニクスの一騎打ちだ」
「明らかに勝ち負けですが、どちらも関西初輸送ですね。馬運車の中で入れ込んだらアウトなんじゃ〜?」
「まあな、バット!明け3歳。見るもの全てが新鮮でルンルンしてんじゃねえかと思う。歳を喰ったら『こんな長い時間馬運車に乗るなんてヤダな〜』なんて塩梅だろうが……….。この2頭に託してみたい大東建○さぁ〜ね。ワイドでいいんじゃねえか2倍近くは付くだろう。一杯買ってアッチッチのひろみ郷になると厄だから3万ばかし放ってみっか」と結論付けた。

旅に適齢期があるように、馬運車での移動にも適齢期があるとマスター。
川田JとルメールJがお手て繋いで仲良くゴールを突き抜ければ良しなんだが…….さて。