北新地競馬交友録

活字離れが叫ばれて久しい。
世の中には、もっと楽しい事が沢山あると云う事であろうが、一つには何を読んだらいいか判らない。
尤もである。
その一つの指針としてあるのが、年間のベストセラーランキング。
因みに2017年のランキングを見てみると………。

1位 「九十歳。何がめでたい」(佐藤愛子)
2位 「伝道の法 人生の『真実』に目覚める時」(大川隆法)
3位 「蜜蜂と遠雷」(恩田陸)
4位 「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」(ケント・ギルバート)
5位 「おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典/続ざんねんないきもの事典」(今泉忠明 監修)
6位 「日本一楽しい漢字ドリル うんこかん字ドリル 小学1年生・小学2年生/うんこ漢字ドリル 小学3年生~小学6年生」
7位 「騎士団長殺し」(村上春樹)
8位 「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」(呉座勇一)
9位 「新・人間革命(29)」(池田大作)
10位 「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」(佐久間健一)

毎年の事であるが、これが全く持っていけない。
読みたいと思わせる本が余りにも少ないのである。
この中で読んだのは、「蜜蜂と遠雷」「騎士団長殺し」「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」の3冊。
◎「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」
△「騎士団長殺し」
×「蜜蜂と遠雷」
応仁の乱は面白かったが、騎士団長殺しはいかにも村上春樹。
喪失感と虚無感に苛まれた主人公が、現実とアナザワールドを行き来する、「またこれか〜」
蜜蜂と遠雷は、ピアノコンクールを軸に若者が飛んだり跳ねたりする、「なんだ〜こりゃ?」

この年だけでなく、過去、ベストセラーランキングを見て読んだ本に「得したな〜」はナッシングであるが、唯一唸ったのが養老孟司の「バカの壁」だ。
「自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまうという壁がある。また、これは常識だから、とか、自分は知っているなどの思い込みも『バカの壁』である」
脳の機能の話しなどはかなり難解でも、自分自身について、また他人について今まで理解することのできなかった多くの事の、解決への道標となる本である。
一般ピーポーは、世の中いたるところにある壁の存在さえ知らず、同じところをグルグル回ってるのだ。
壁を突破する事は容易ではないのである。

「この『ジャパンC』、不動の軸はペリ公のシンボリクリスエス。秋天のあの強さを見せつけられたら、逆らうのは自殺行為に等しいわな〜。相手も『菊花賞』では距離の壁に阻まれての3着だったが、2400ならドンと来い!デムーロのネオユニヴァースで問題ねえ。いくら3歳だからって55kで御免なさいョ!てなもんだお父さん。同じ3歳馬、『菊花賞』をゲットしたアンカツのザッツザプレンティはどうかって?いらねえョ!舞台は府中の2400。開幕週ならともかくラスト開催の『ジャパンC』に先行勢の出番はねえ。長い直線で前に行くと測ったように差し切られるコースなのは、ちょんまげ結ってふんどし一丁で走り回ってた頃から決まってる。馬券はペリ公とデムーロのワイド1点狙い撃ちのリンダ山本だ。JRAも粋な事をすんじゃねえか!皆さん!ボーナスはまだでしょ、このレースで儲けてください!のサービス興行ョ。3番人気のアンジュガブリエル?そったら見た事ねえ馬!買えっか!」
聞かれてもいないのに長講釈はマスターの昔からの悪い癖である。

「第4コーナーを回って直線!タップダンスシチー先頭!リードはまだ4馬身はある!ザッツザプレンティが2番手!3番手は追い込んで来るアクティブバイオ!坂を上がってデノン!シンボリクリスエスはまだ中段!先頭は逃げる!逃げる!タップダンスシチー!3馬身から4馬身のリード!デノンが追い込んで来る!さらにネオユニヴァース!ザッツザプレンティ!シンボリクリスエスは伸びがない!200を通過!先頭はタップダンスシチー!よ〜やく追い込んで来たシンボリクリスエス!しかしタップダンスシチー逃げきった!タップダンスシチー!ゴールイン!タップダンスシチーだ!広い府中を一人旅!」
1着 タップダンスシチー 佐藤哲三J
2着 ザッツザプレンティ 安藤勝己J
3着 シンボリクリスエス ペリエJ
4着 ネオユニヴァース デムーロJ

「あり得ねえ!府中の2400を逃げ切るなんてあり得ねえョ。しかも条件戦じゃねえんだ。シンボリクリスエスだぜ!ネオユニヴァースだぜ!俺ぁ〜悪い夢でも見てんじゃねえか。反骨のロンリー佐哲とタップダンスシチーがとんでもねえ大仕事をやりやがった。恐れ入谷の鬼子母神たぁ〜この事だ。馬連が7020?安いじゃね〜か!当然、こったらもん万コロだっちゅ〜の」
影も踏ませぬタップダンスシチーの逃走劇。
馬券を外してオヨヨのマスターが、狐につままれた程で腑抜けみたいになっている、梅田ウインズ午後4時前。
直ぐにつるべ落としで日が暮れる。

養老孟司の『バカの壁』が堂々のベストセラー1位となり、タップダンスシチーが『府中の長い直線の壁』を堂々と逃げ切った。
2003年、もうひと昔半前の事である。