北新地競馬交友録

遠征

いつの頃からかは定かではないが、この時期の競馬を総して『夏競馬』
ひと昔前は、そんな洒落た総称はなく、単に『ローカル』と云っていた。
うら淋しい響きである。
「ええ、どうせ私は都会の暮らしに疲れた女。故郷に帰ってスナックでもやろうかしら。これでも田舎ならちょっとしたもんよ。純な男にプロポーズされたりして、まあ〜それも悪くないかな」と、蓮っ葉なホステスがくわえ煙草で呟いていそうな響きがする。

その『ローカル』の一つ、新潟競馬場に誰が云い出したか、「車で行こうか。交代で運転したらそんなにしんどないんちゃう?」
根がおっちょこちょいなもんだから、「ええやん!ええやん。した道走ったら安上がりやろ」で即決。
3人組が大阪を夜中に出発したのだが…..。
「え!なんや!水が上からバンバン流れて来るがな。ハンドル取られる(≧∇≦)」
富山の山道でゲリラ豪雨に遭遇。
恐ろしい勢いで押し寄せる鉄砲水に肝を冷やしながらやっと切り抜けたと思ったら。

「ガスが少なくなって来たで。どっかで給油せんとあかん」
「どこぞ、走ってたらあるんちゃうか」
都会暮らしの人間にとっては、ガソリンスタンドなんぞはいつでも開いているのが普通でも………..。
スタンドはあっても、しっかり閉まっていて、いけども、いけども開いているところがない。
真っ青な顔をして夜中にガス欠に怯えながら運転をしているなんて、笑うに笑えない事態発生。

開いているスタンドに辿り着いてホッと一息をついたまではまだ良かったが、「おい、まだかいな。新潟入ってから無茶苦茶走ってるで」
「そやな〜新潟は広いっちゅ〜こっちゃ」
ここより新潟県の標識が出てから2時間以上走っているのに、まだ着かず疲労困憊で、誰もが無口になる午前7時過ぎ。
「こ、こんなはずでは………」
完全に舐めきっていたバチが大当たりである。

半死半生で辿り着いた新潟競馬場。
正直、レースの詳細は覚えていないし、勝ったか負けたかすら定かではない新潟遠征。
「何が千直や!全然見えへんやんか」と怒りをぶち撒けた新潟遠征。
帰りの道中でギブアップし、『下呂温泉』での泊りを余儀なくされた新潟遠征。
今ではそんな体力も気力もなく、京都、阪神すら億劫と、ひたすら馬鹿の一つ覚えで、神戸元町ウインズのお世話になっているマスター_:(´ཀ`」 ∠):

車での新潟遠征、遠い昔の話しだな〜。