北新地競馬交友録

岐路亡羊

中国戦国時代、羊が一匹逃げたので大勢で追いかけたが、分かれ道が多くて見失ってしまった。
その話を聞いた思想家・楊朱は、学問の仕方もそれと同じで、方法がいくつにも分かれているので学者は真の生き方がわからないと悲しんだという故事がある。

『岐路亡羊』

そんなこんなで、学問の道は簡単には真理を得がたいことから転じて、いくつもの方針や要素があるため、どれを選ぶべきか迷ってしまうことのたとえである。

「マスターさん、おはようございます」は熊本天草出身○原さん。
「へい、へい。何とも爽やかな朝だぜ。抜けるような青空を見てると、毎週、毎週、馬券と取っ組み合いしてるのが馬鹿くさくなって来る。もうちぃと真っ当な生き方があるんじゃねえか、な〜んてね」
「そろそろ引退ですか?」
「まあ、それも有りだが、ドキドキする事がなくなりゃ〜一気に老け込むからョ。空に太陽がある限りはアキラ錦野、懐にマニーがある限りが俺って事で」

「本日のおススメのレースはなんですか?」
「ズバリ!阪神のメイン『アーリントンC』だ。ルメ公のタワーオブロンドンが3着を外すような事は、お天道様が西から上がるようなもんで、まず有りえねぇだろう。問題は相手だ。ワイド1点で決めたいんだが…….将雅のパクスアメリカーナか、康成のインディチャンプかでチョイと悩む。良馬場ならインディチャンプの差し脚が炸裂するとは思いつつも、なんせ最近の将雅は恐ろしいほど乗れてるからョ」

「現在タワーオブロンドンとパクスアメリカーナとのワイドが4.1。インディチャンプとのワイドが2.7。馬券のセオリーからするとパクスアメリカーナじゃないですかね?」
「○原さんがパクスアメリカーナを推すなら、インディチャンプにすっか!」
「それはいくらなんでも、いくらなんでも酷いです」
○原さんの、どっかの木っ端役人みたいなもの云いに、「だって、○原さんもうご老体だから運なんて残ってねえだろ。ならば反目のインディチャンプじゃねえの」とひとっぱたき。
「………………..」

「発表!タワーオブロンドンとインディチャンプのワイドに3万を張り付ける。これで増やして、明日の『皐月賞』で少し太く勝負をかけちゃる。なんせ明日は大雨予報。人気でも1枠を引いたプリンスのワグネリアンがすっ飛ぶんだから、結構な馬券になるはずだぜ」と結論付けた。
根が単純な人間なんで『岐路亡羊』なんて言葉とはあまり縁のないマスターだが、さて。

岩田J!気張れ!チェスト。