北新地競馬交友録

予想放棄

大阪北新地で今月オープンした某クラブ。
2週間が経ったが、連日押すな押すなの大盛況でてんてこ舞い。
さすが一流のホステスさんを集めて、鳴り物入りでオープンしただけの事はある。
そのクラブに勤めているのが、赤の他人ながら、マスターを「パパ、パパ」と慕ってくれている◯◯ちゃんだ。
北新地で3本の指に入ろうかと云う筋金入りの競馬好き。

その◯◯ちゃんから「パパ起きてる?」とLINE電話が鳴ったのは、京都馬主協会会員さんが帰られた金曜日遅目の時間。
「おう!お目々パッチリ!コニカ!パッチリだ」
「何それ?店が終わってアフターもないから遊びに行っていい?売り上げ協力する」
「もちのロンじゃん。売り上げ協力はいいよ。もう営業時間は終わりだから手仕舞いだ。それに娘からマニー取る気はねえよ」
「は〜い!」

最近人気の赤ワイン『ダークホース』でまずは乾杯。
「お疲れ!」
「パパもお疲れシャン!でダービーどうするの?」
「どうもこうもねえよ。ここんとこ馬券がまるで当たんねえ。予想するだけ無駄だ。懐ろも薄くなって、隣のセブンイレブンで深夜のバイトでもするしかねえぜ。◯◯ちゃんはどうな?」
「オークス当てたよ。モズカッチャンとソウルスターリングの三連複2軸で。4600円は良く付いたと思うわ」
「小じっかりしてんな〜」
「テヘペロ(≧∇≦)」と競馬談義に花が咲く北新地午前1時前。
普通なら横に座らせただけで5万円が飛ぶホステスさんとしんねことは、冴えない飲み屋のオヤジにもたまにはいい事もある。

「◯原さん、今年は後何週競馬ある?」
「え〜と、少し待ってくださいよ。今週を入れて31週ですね。どうしたんですかマスター?」
「いや、毎週10万いかれたら、どんだけ負けるかと思ってよ。31週だと310万か〜長い旅に出るしかねえじゃん」
「一回ぐらいプラスになるんじゃないですか」
「おい!テメー俺の事を馬鹿にしてんのか?まさか、まさかな。バット、下がっちゃ怖い柳のお化けであり得る」と弱気の発言が痛々しい。

「失礼しました。でダービーはどのように」
「やめた」
「え!馬券買わないんですか?」
「違うよ。自分で考えるのをやめたんだよ。俺が娘のように可愛いがってるホステスの◯◯ちゃんの予想が絶好調だから、それに乗っかる。軸は6枠12番ルメールのレイデオロ。馬連で相手は内から豊のダンビュライト、洋文のスワーヴリチャード、将雅のサトノアーサー、弘平のアルアイン、圭太のペルシアンナイトの5点に各1万。三連複レイデオロ一頭軸、相手は同じ5頭で各1千。合わせて6万でいてこます」

「デムーロのアドミラブルは買わなくてもいいんですか?」
「◯◯ちゃんがダービーの大外なんていらないって云ってるから買わねえよ」
「……………」
負けは人を卑屈にする。
いくら自分が当たらないかと云って、予想放棄でホステスさんの予想に乗っかるとは(~_~;)
なんて、厳しい事を云うには余りにも参っちゃってるマスターは、さすがに見ていて切ない。
デムーロ!来るなよ!すっこんどれ!