北新地競馬交友録

仕事の流儀

ジャーナリストの故大宅壮一が作った流行語『一億総白痴化』
「テレビというメディアは低俗なもので、テレビばかり見ていると、想像力や思考力を低下させてしまう、とんでもないものである」
確かに昨今の地上波を見ていると、安っぽいお笑い芸人や、薄っぺらい思考のタレントが幅を利かせ、番組の内容もお寒い限りである。
中でもドラマの酷さと云ったら、小学生の学芸会に毛が生えたぐらいの役者と、レベルの低い脚本ばかりだ。
やれ、「月9の視聴率が最低だ!」「あの役者では視聴率が取れない!」なんて記事が踊っているが、まともな大人が見るに堪えない内容なのだから当然である。

「純、蛍、俺には、お前らに残してやれるものはなんもない。
でも、おまえらには、うまく言えんが残すべき物は、もう、残した気がする。
金や品物はなんも残せんが残すべき物は、伝えた気がする」
国民的ドラマと云われた『北の国から』の最終シリーズ『遺言』で、田中邦衛さんが扮する黒板五郎の子供達への言葉だ。
この下りだけでは、それがどうした?と云う感じだろうが、奥さんと離婚して、都会育ちの純と蛍と3人で北海道に移住してからの、黒板五郎の生き様を知っている視聴者は、ある人は大きく頷き、ある人はホロリと目から汗が落ちる場面だ。
「最近のドラマは面白いかも知れない、でも僕はドラマには感動がなければいけないと思うんですよ」
『北の国から』の脚本家、倉本聰の言葉である。

その倉本聰を追った番組が月曜日に放送された。
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』
ニャンと!315回を数える長寿ドキュメンタリーだ。
この番組に登場するのは、誰もが認める、その道のプロ達。
斬新な試みに挑戦し、新しい時代を切り開こうと格闘中の挑戦者であり、数々の修羅場をくぐり、自分の仕事と生き方に確固とした「流儀」を持っている仕事人たちである。
倉本聰の徹底的に人間を突き詰めていく流儀には感嘆したのだが…….次回の番組の案内で………。
「ただ、ひたすら前へ 競走馬・オグリキャップ」のテロップと番宣が(^ー^)ノ

「マスターさん、1番好きな馬はなんですか?」
日曜日の競馬が終わった後の、マスターとまあまあ愉快な仲間恒例の反省会。
儲かれば万歳三唱、負ければ誰かを悪者にして鬱憤を晴らすのが常だが、そんな話しも一時間もすれば飽きてくる。
「俺か?俺ぁミーハーだと馬鹿にされるかも知んねえが、断然オグリキャップよ」
「あ、ビデオで見た事あります。『有馬記念』魂のラストランですね」
「もちろん、ありは涙ボロボロだったが、その前にとんでもねえレースを見ちまったんだ。1989年の『マイルチャンピオンCS』よ」とマスターが遠い目をして語りだした。

「さあ!直線!外から白い頭巾バンブーが抜けて来た!内からオグリ!伸びるのかオグリ!バンブー先頭!バンブー先頭!オグリは2番手!外からルイジアナピットが上がって来るが!バンブー!オグリ!この2頭だ!バンブーが逃げた!バンブーが逃げた!オグリが内を突く!内か!外か!僅かに内オグリか!」
バンブーメモリーの鞍上は天才武豊、オグリキャップの鞍上は漢南井克巳。
4コーナーで武豊Jに蓋をされ馬群に突っ込むも、バンブーメモリーに突き放され絶望的状況のオグリキャップ。
誰もが負けた!と思ったところを、信じられない走りで差を詰めて、遂にハナ差の勝利を手中にしたのだ。

「あの頃はよ〜、バブルのど真ん中。普通のサラリーマンだったが生意気盛りで、マニーもねえのに週3回の北新地通い。馬券はと云えば今の5倍は買ってた。何せ、競馬場に行くと作業服を着て現場から直行したアンちゃんが、ポケットから100万の帯を出して馬券を買ってた時代よ。根がおっちょこちょいだから、周りに影響されて、あっと!気が付きゃ〜鶴田浩二じゃねえが、右を向いても左を見ても負債の山だ。嫁さんはまともに口も聞いてくれねえし、会社では今のブラックなんて生易しいぐれえのノルマ。北新地はツケの山で、ちぃとばっかおっかねえ所からの負債も津波のように襲って来てよ〜。あ〜いっそう楽になっちまおうか(≧∇≦)なんて日々よ」

「負債はお幾ら万円ほど?」
「うん、一本は楽勝であった。そんな時あのレースを見たんだ。元気を貰ったって事じゃねえよ。世の中なにがあるかなんて判らねえ。もう一踏ん張りしてみっか!そんなところだ。南井の野郎、インタビューで泣いてやがんの。俺も気が付きゃ泣いてたぜ。馬券か?そったらもんオグリとバンブーの一本買いよ!金額か?自慢になるからショナイだちゅ〜の」
今では、身分不相応ながら、やられても生き死にとは関係ない金額で馬券を楽しむマスターだか、オグリキャップに対する思い入れは半端ないようで。

2月13日(月)22時25分〜
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
特別企画「 ただ、ひたすら前へ 競走馬 オグリキャップ」必見です(^O^)/