北新地競馬交友録

運がない

お正月の特番で何が面白いかと云えば、5馬身はぶっちぎりなのがテレビ朝日の『マグロに賭けた男たち』である。
極寒の大間の海での一本釣り、いつ終わるとも知れない巨大マグロとの死闘は、毎年見応え充分だ。
一本釣りは、数打ちゃ当たるはえ縄漁法と違って、ソナーや魚探を睨みながら、マグロの泳ぐ方向を見定めて、サンマやイカをたった1匹投げ入れる。
まさに食うか食わぬか!男度胸の漁法なのである。

「マスターさん、新年会なんですが、テレビが見れる店がいいんじゃないかと思い、元町の居酒屋で特等席を予約しました。
毎年、楽しみにしてるでしょ、あのマグロの番組」と競馬友達のK君。
「ありがとよ。録画しようかとおもってたんだがライブが1番だ。今年は凄えぞ〜!なんせあの悲運の漁師・山本秀勝さんが4年ぶりに100キロオーバーのマグロをゲットすんだからよ〜」

ビールから始まり、熱燗で暖まり、ウヰスキーのロックをグビグビで、パラ酔いモードのマスター。
番組が始まる頃には完全に出来上がっている。
山本さんは運もないが、どうにも手際も良くない。
糸巻き機がからまったりして、常にアタフタしているのだ。
「何やっとるんなら!チンタラチンタラしやがって、あんな事じゃ〜釣れるもんも釣れねえよ」

応援していると云いながら、ボロカスに貶しまくるマスターだが、148キロのマグロを上げた場面では「よっしゃ!」とガッツポーズ。
山本さんがマグロの心臓と背びれを神棚に捧げて、100キロ越えの大物を釣った時にしか食べないという寿司を食卓に並べた場面では、もらい泣きまでしてるんだから単細胞人間極まれりである(≧∇≦)
その5時間前、『シンザン記念』はマグロの一本釣りのはずだったのに…….。

「考えるまでもねえじゃん。ペルシアンナイトとアルアインの一騎打ちだろ。雨が降りゃ〜アルアインの方が先着するかもな。どちらにしても、この2頭が3着を外すような事がありゃ〜閣僚が緊急招集される事態になら〜ね。ワイドが前売りで2.2ー2.6付いているから、5万ばかし張り付けるか」とマークシートを塗り塗りしたのだが。

「第4コーナーから直線!先頭はマイスタイル!外からトラスト先頭!更に外からタイセイスタイリー!内を狙ってペルシアンナイト追い込んで来る!キョウヘイ!キョウヘイが馬群を割って突っ込んで来た!抜けた!抜けたキョウヘイ先頭!2番手はタイセイスタイリー!ペルシアンナイトは3着までか」

パーフェクトなレース運びで内を突いたシュミノーJのアルアインが、前の2頭の間を割ろうと仕掛けた瞬間、挟まれて失速。
その時点でマスターの馬券は鼻もかめないゴミと化した。
「こんな事って」と絶句したまま、神戸元町ウインズの天井を虚ろな目で見上げる午後4時前。
「マスターさん、あの脚色なら………」と慰める◯原さんに、「これが競馬よ。年明けから運に見放されてたがトドメを刺されたって事だろう」と力なく呟いたそうな。

悲運の漁師山本さんは、100キロオーバーのマグロに3年間も見放されてたが…….3年どころか、3か月も運に見放されたら、競馬から引退するしかない境遇のマスター。
来週は、何とかせねばなるまい( ̄^ ̄)ゞ