北新地競馬交友録

昭和

『続・深夜食堂』がシネマハウスで封切られた。
この作品は7年前、東京ではTBS、大阪ではMBSで文字通り深夜に放送されたのが始まり。
オープニングは車の中から見える不夜城新宿と思しき風景に、とても切ない歌が被さる。
舞台はその賑やかな通りから路地に入った小さな食堂「めしや」(通称:深夜食堂)
「作れるもんなら何でも作るよ」
小林薫さんが扮するマスターが、やや弛緩した雰囲気を漂わせながら、開店準備にいそしんでいる。

ドラマやシネマでは、その深夜食堂に毎回ワケありの人々が、新宿の風に吹き寄せられるがごとく集まってくる。
都会の厳しさに翻弄され傷つき倒れそうなった人々が、マスターの料理や、深夜食堂に集まる人達の人情によって救われ、再びゆっくりとではあるが歩きだす様が繰り返し繰り返し描かれて来た。
それはまるで、村上春樹風に云うならばデタッチメントが当たり前の平成から、人と交わる事にもう少し積極的だった昭和にタイムトリップしたかのようである。

社会に格差が広がり、自分の事で精一杯。
とても他人様に気を配る余裕なんてありゃしないのが現実。
更に云うならば、人と交わると云う事はいい事ばかりじゃない。
いい事と同じぐらい、いや、それ以上に厄介事も付いてくる。
結局、精神的負担のない人達と、狭い世界で生きるのが安心と云うのを責める事は出来まい。
深夜食堂は、昭和の香りを漂わせたおとぎ話の世界。
だから、多くの人達の支持を集めているとも云えるのだ。

「スグルちゃんのレーヌミノルは強えぞ〜。『小倉2歳S』を見ただろ。持ったままオイデ!オイデの大楽勝。枠も6枠8番なら許容範囲だ。バット!問題は相手で、めっこを入れていたモンドキャンノ、レヴァンテライオンがまさかの8枠とは……….東京1400の大外枠は厄だ。特に行きたがるモンドキャンノは前に壁を作れねえのがな〜」と悩むマスター。
「でしたら枠で買うのもありなんじゃ〜?」競馬友達K君の提案に、「それで行こう!枠の6ー8を3万5千。馬連でスグルちゃんのレーヌミノルと圭太のコウソクストレートを1万、経験豊富、裕信のタイムトリップを5千で押さえるか」と『京王杯2歳S』の馬券を結論付けた。

「第4コーナーから直線!タイムトリップ先頭!外からレーヌミノルが先頭を伺う!」
好発を決めたレーヌミノルが番手を追走。
抜群の手応えで直線を向いた。
「おっしゃ!スグル!いてこませ!」と一声マスター。
「タイムトリップとレーヌミノルが並んだ!追い込んで来るのはディバインコード!坂を上がって外からモンドキャンノ!ぐんぐん差を詰める!」
「デケター!サンキューベラマッチョ!善臣大先生以外なら何でもいい!」
「200を通過!先頭はレーヌミノル!モンドキャンノが凄い脚!モンドキャンノ!レーヌミノル!モンドキャンノ!レーヌミノル!モンドキャンノが抜けた!3着あらそいは粘るタイムトリップ!ディバインコード!コウソクストレートも追い込んで来る!先頭モンドキャンノ!ゴールイン」

1着 モンドキャンノ ルメールJ
2着 レーヌミノル 浜中J
3着 ディバインコード 柴田J
枠連6ー8が400円も付いた。
家のリビングでレースを見ていたマスター。
「神戸元町ウインズのおとっさん達も喜んでんじゃねえかな〜」と独り言。
世の中の馬券の主流は3連系なのは百も承知の助だが、おたっしゃ倶楽部が集うウインズは、未だに枠連を買っている人がワンサカいる。
昭和の時代から馬券を買っている年季の入った競馬ファンは、長く競馬を楽しむなら枠連に限ると云う事を知っているのであろう(^O^)/

深夜食堂が昭和の香りを漂わせたおとぎ話の世界なら、神戸元町ウインズはザ!リアル昭和なのである。

皆さん、お付き合いありがとうございました。
明日も続きます。
宜しくお願い申し上げます!