北新地競馬交友録

押しても引いても

「ひと目会ったその日から」
「恋の花咲くこともある」
「見知らぬ貴女と」
「見知らぬ貴男に」
「デートを取り持つ」
「パンチDEデート!」

故横山やすし師匠と、桂三枝師匠(今は桂文枝かな?)の司会で一世風靡した『パンチDEデート』
一般民なら、ひと目あったその日からもあるであろうが、東の銀座と並び称される西の北新地ではそんな事はまずない。
恋の花が咲く前に、マネーの花が咲き乱れ……….てな塩梅である。

とは云うものの、そんなお楽しみがなければ、座って4万!おシャンパンで3万!チャンスボトルで3万!締めて10万じゃ〜誰も行く人間なんていやしない。
その北新地にお店を構えているマスター。
夜の紳士達から相談とも愚痴ともつかない話しを聞く機会に事欠かない。

「ごっつい通ってるし、同伴かて…….最近メールの返信も遅いし(`_´)ゞなめとるんか!」
紳士がご立腹である。
「社長、頑張り過ぎですよ。一旦距離を置いてみたらいかがですか。云う事何でも聞いてたら有り難みも薄れますしね」
「………………….」
「社長!押してもダメなら引いてみな!ですよ」
「そんなもんかいの〜」

まあ、そんなもんで有る。
夜のお嬢様から必ず連絡がある。
しかも、それまでは聞いた事もない猫撫で声やスゥイートなメールで。
それが仕事なんだから当然と云えば当然ではあるが、それを云ったらお終いだ(笑)
その昔は恋すると云えば乙女の専売特許だったが、昨今は功なり名を遂げた紳士が恋に身を焦がす。
日本は平和なのである。

「阪神で『桜花賞』が行われてるって云うのに康誠は福島だぜ!福島!いくら最近乗れてねえからって、そりゃナンボ何でも可哀想じゃねえか。不憫だから応援するぞ!」
日曜日『福島民報杯』マテンロウボスに騎乗の岩田Jに肩入れしたマスターだったが……….。
「第4コーナーから直線に!逃げる!逃げる!マイネルミラノ!追ってくるシャイニープリンス!200を通過した!」

やや折り合いを欠き気味ながらも、インでじっと我慢のマテンロウボスで、得意のイン突きにコースを取った岩田J。
「どりゃ!ヤスナリ!差せ!そっから伸びて来い!伸びやがれ!ヤスナリ!」
渾身の応援をするも………..。
「先頭交わった!シャイニープリンス!2番手あいだからヤングマンパワーか!ヤマニンボワラクテも突っ込んで来た!シャイニープリンス!シャイニープリンスだ!ゴールイン」

「康誠の野郎何やってんだ!あそっから伸びて来るのが真骨頂だっちゅ〜のに」
「マスター、岩田J追う時のフォームが崩れてませんか?」と競馬友達のK君。
「君もそう思うか。前後上下に体重を移動しながら全身を使って追うのが康誠流だが、その動きがどうにもバラバラに見えんだよな。本人は必死で追ってんだろうが、ちっとも馬が前に進まねえんだもん。押しても引いてもドモナラン」

北新地の紳士達とっては、それなりの効果があるのだが………こりゃ〜重症だ( ̄(工) ̄)