北新地競馬交友録

向こう落ちを張る

マスターの店のある大阪北新地。
昼間の疲れを癒そうと、ドッと人が繰り出すのは夜7時を過ぎたぐらいから。
昼間はメインストリート『本通り』も、ランチタイムが終わると閑散としている。
そんな午後から夕刻にかけて、通りのあちこちで見かけるのは酒屋の配達中のトラック。
大概側面には屋号が書いてある。
一番メジャーなところでは『○田酒店』だろうか。
まあ〜よくぞこれだけ色んな酒屋があるもんだと、一般ピーポーは驚かれるはずだ。
もっとも北新地のお店の数はおおよそ5千店と云うから、それも納得と云えば納得なんだが………。

「マスター、菊花賞は何を買うんですか?」
「おう!今日の枠順を見て決めたぜ。知りたい?」
「教えてください。お願いします」
とペコリーノで頭を下げたのは、マスターの店にお酒を配達しているおじさん。
京都馬主協会『北新地競馬交友録』の熱心な読者と云いたいところだが、「毎日読めよ!何があっても読め!」とマスターからクンロクを入れられてんだから、気の毒と云うしかない(~_~;)

もっとも本人曰く「マスターの予想は大概ハズレで、いつも損ばっかりしてるから読んでいて楽しい」
人の不幸は蜜の味とはよく云ったもので、馬券がハズレて七転八倒する様を楽しんでいるそうな。
失敬な輩ではあるが、それを聞いたマスター、「クリックしてくれんなら猿でもいい!」と云ったとか云わないとか(笑)
読者は大切にしなくちゃ!精神らしい。

「でマスターの本命はなんですか?」
「2枠4番キタサンブラックよ!」
「え〜!血統的に距離持たないんじゃ?」
「母父サクラバクシンオー、父も2000がベストのブラックタイドだって云いたいんだろ。あ〜やだねど素人は、3000mなんてどの馬も走った事〜ねえんだ。やって見なきゃ判らねえだろが。それによ〜俺の調教の先生からこれまでで最高のデキだってお墨付きが出てんだ」

マスターの調教の先生とは、京都馬主協会会員、先日も岩田Jと対談したタバート君の友達で、この11月から個人馬主になる予定のN君。
若干40歳で馬主になるんだから大したもんだ。
それに加えて馬券が上手い。
京都馬主協会の某お偉いさんも、ここぞと云うときは、お伺いを立てているのは知る人ぞ知る話し。

「じゃ〜何買うんだよ?」
「マスターがキタサンブラックなら、私はリアファルから買おうかな」
「馬鹿だね〜淀の3000メートルは乗りやすいインコースが有利。6回もコーナーを回るんだぜ。それに大外に逃げ宣言をしてるスピリッツミノルがいてるから、いくらルメールだって思う通りにゃならねえよ。リアルスティールは引っかかるだろ、サトノラーゼンはセントライトでイチコロパンでキタサンブラックに負けてるだろ、スティーグリッツなんて完全に格下よ」

「なるほどじゃ〜その4頭のBOXで」
「おい!それは『向こう落ちを張る』と云って行儀の悪い買い方だぜ。全く持って気分悪いな〜」
「だってマスターの予想全然当たらないんですから」
「………………….」
キタサンブラック!マスターの名誉のためにも3着死守でお願いしまス!