北新地競馬交友録

『口取り物語 番外編』園田競馬でハチャメチャ その3

歳を取ると自慢話が多くなるのが常である。
世の中にいても、いなくても、どうでもいいマスターのような人間の自慢話と云えば、「10万馬券を3百円取ったぜ!」とか、「◯◯のホステスにモテモテよ!」とか、「昔はケンカが無茶苦茶強くてさ!」なんてところ。
要するに程度が低くい。
中でもマスターのケンカ自慢は、聞いてる周りが「あ〜あ、また始まった」てなもんだ。

「確保!確保」
30歳をちょい前に、大立ち回りをやらかしてポリスにお世話になったマスター。
JR神戸線の大阪駅から乗り込んだ最終一本前の普通電車の中で、つまらない事からの諍いが発生。
突掴み合いになり、塚本駅で電車を8分も止めて、階段を駆け上って来たボリスにお縄と相成った。
JR塚本駅前のロータリーにはパトカーが数台止まり、野次馬が押すな、押すなの山盛りモリモリだ。

「これから駅に謝りに行きましょ」
「眠てえんだよ」
「そんな事云ってる場合じゃないですよ。電車を8分も止めたんですから、損害賠償請求されたらウン百万円は覚悟しないといけません」
警察でコッテリ油を絞られ、相手側とは、お互い治療費、慰謝料は一切請求しないと、覚え書きを交換して一件落着かと思いきや………。
今は亡きパパンの会社の顧問弁護士にそう云われて、マスター真っ青。
駅まですっ飛んで行って、土下座する勢いで勘弁して貰ったそうな。

よっぽどそれに懲りたのかそれ以降、25年以上人様と喧嘩をする事は一切なく、たまに電車の中で行儀の悪い奴を一喝するぐらいだ。
とにかく顔が見た目怖いし、ギロっと睨んだ視線がシャープだから、大概下を向いてお終い。
どれぐらい視線がシャープかと云えば、ビービー泣いてたベイビーが、マスターに睨まらると、ピタッと泣き止むぐらいシャープ。
バット!そんなのへっちゃら!の人間もいるようで……。

「川原わっしょい!アザンわっしょい!」
『兵庫オーナーズC』で、好位からの差しが決まり、アザンクール楽勝。
馬主席では、尼崎の土建屋の社長を初め、皆、アザンクールの馬券を握りしめての大応援。
そりゃ〜盛り上がる。
「おめでとう!表彰式あるで。早よ行きいな」
金額の多寡は別にして、マスターの顔見知りは全員儲かったもんだから、皆、『大森屋のニコニコのり』も仰け反るぐらいのビックスマイルだ。

「表彰状!マイケル・タバート殿………」
園田競馬のお偉いさんが、表彰状を読み上げだした途端。
「何や!何でお前がマイケルやねん。日本人バリバリやがな!」
(代理だよ。それぐらい判れ)
こじんまりとしたウィナーズサークルでジャージだか、寝間着だから判らない服を来たおっさんから何度も野次が。
さすがにムカッとしたマスター。
昔取った杵柄で、シャープな視線をバシバシ飛ばすんだが、平気の平左だ。
逆に「何にらんでんねん!コラ!」と逆ねじを喰らわされる始末だからこれはもう笑うしかない。
マスターも形無しの表彰式となったと云うお話し。
園田!恐るべし!だな。

そんな行儀の悪い人もいてますが、コンパクトで競馬は見やすいし、昔の競馬場の風情もあるし、園田屋のおでんは美味しいし、いいとこです園田競馬。
あ、それとケンカは、良い子の皆さんは、絶対しないように。
マスターも若気の至りと反省しきり。
暴力は悪です。
これは声を大にして申し上げときますね!

次回の『口取り物語』は「偶然と云い切るには」です。
皆様、お付き合いの程、宜しくお願い申し上げます。