北新地競馬交友録

ピンハイ

50年以上前に大ヒットした、佐良直美の『いいじゃないの幸せならば』。
当時中坊だったと思うが、何とも不思議な歌詞に首を傾げていた。
今は亡きパピーに「どう云う意味なん?」と聞くと、「この世の中には男と女がおるやろ、男が好きな女もいれば、女が好きな女もいる。女が好きな男もいれば、男が好きな男もいる。世間でどう思われようが、自分が良ければそれでいいやないか。まあ、そう云う意味や。」

昭和6年生まれ、口より先に手が出るDV親父の典型。
今オツムが悪いのは、小さい時に殴られまくり、脳が何度もグラグラしたのが原因だと信じている。
そんな親父にしては、随分と洒落た事を云ったものである。
昭和、平成、令和と時は流れ、佐良直美がわざわざ歌わなくても、ごくごく普通の事となった。

そんな中、「同性婚カップルが隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ。秘書官もみんな嫌だと言っている」と発言したのが、荒井首相秘書官。
ニホリカだけでなく、世界の潮流に逆行する発言を普通にかますところが痛い。
この問題だけでなく、検討史や、優秀な小倅を含めて、国の中枢を担う人間は、世間と大きく目線や立ち位置が違うようである。

このふざけた輩達に、審判を下せないなら、国民が馬鹿だと云う事ではあるのだが………..。

鉄の結束を誇った北新地の盆暗と、プライム企業勤務のK君、某製鉄会社を定年退職し悠々自適熊本天草出身○原さんに亀裂が走った。
「将雅!頼む!」片手拝みも虚しく、3着確保が精一杯だった、『セントポーリア賞』のジェイパームス。 
単勝と保険の馬連しか買っていないのだから、馬券は当然ゴミとなった。
そのレースで、3連単3着付けで馬券をゲットしたのが○原さん。
ご丁寧に馬券の写メまで送ってきたのだから、盆暗の怒る事、怒る事。

「てめ〜俺に喧嘩売ってんのか?」
「だって、マスターさんが、俺の知り合いの馬は3着ばっかだと云うもんだから。土曜日東京3R、中京11R。日曜日中京1R、中京4R、小倉8R。土日で5レースも3着なんでしょ。軽い気持ちですよ。」
「ああ、そうですか。それは仕方ないですね!何て俺が云うと思うのか。ふてえ野郎だぜ。短い付き合いだったな。精々3着付けでお稼ぎなさいて〜の。」
「………………………」
それが先週の日曜日の話しである。

「マスター、おはようございます。まだ怒ってるんですか。いいじゃないですか、馬券は自己責任なんですから。」とK君。
「別に○原さんに怒っちゃいねえよ。余りにもだらしのねえジェイパームスに、心底入れ込んだ己に怒ってんだ。お客に推奨しまくったもんだから、被害金額も半端ねえぞ。人間様なら、頭丸めて出家のレベルだろう。」
日曜日の朝のお約束、北新地の盆暗のボヤキ節は無形文化財レベルである。

「まあ、まあ競馬の事ですから。」
「そう云って40年も過ぎちゃって、この年でローソンの法被着て凌ぐしかね境遇なんだからどうしようねえが、泣いてマニーが戻るなら山の鴉はお大尽。買い続けるしかあるま〜。発表!『東京新聞杯』。狙いはズバリ!ピンハイだ。キャリア2戦で挑んだ桜花賞で0秒1差の5着。続く、オークスでも0秒5差の4着と健闘。してから秋初戦の3勝クラスの西宮Sを完勝。買うならオッズが甘い今回しかない。単勝2万、複勝3万で絵にする。」と宣言した。

北新地の盆暗が知っているかどうかは不明ながら、ピンハイとはゴルフ用語で、上から見てピンと同じ高さ、同じレベルにボールがついていて、距離が合っているという意味。
国民目線が不在の政治屋とその取り巻きの耳元で「ふざけやがって!ピンハイ知らねえのか!」と一度は怒鳴り上げたいものだが………さて。