北新地競馬交友録

大混戦の果てに

『一億総白痴化』
社会評論家の大宅壮一大先生が1957年に発信し流行語となったワードである。
「メディアの中でもテレビは非常に低俗で、あればかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまう。」
それから時は流れ最近では、『一億総コロナ脳化』
地上波のワイドショーやニュースはもちろん、少しはまともかと思っていたBSも酷い。
例えばTB○の『○道1930』などは、メインのテーマに入る前に、必ず新型コロナを煽る。
MCの松原耕○が曲者で、心底心配をしているフリをしながら、「大変だ!大変だ!」と旗を振りまくるのだからタチが悪い。

そんなこんなで、テレビを見ると云えば、1週間に一度のお楽しみNHK大河『鎌倉殿の13人』と、面白そうな『NHKスペシャル』以外はまずスイッチをつけないが、ここのところ釘付けになっているのが、『北京五輪 女子カーリング。』である。
どこが面白いって、「次はコーナーガードか?いやテイクアウトか?ダブルが決まれば2点だ!」なんて、ど素人でも試合に感情移入し、コーチ気分になれるのだから力が入る。
冬の五輪の種目で、我がJAPANが好成績を収めている、ジャンプやスケート、フィギュア。
確かにハラハラはするが、受け手がオツムを使う事は皆無で、ひたすら飛んだり、跳ねたり、回ったりするのを見てるだけ〜なのである。

その『女子カーリング』であるが、史上稀に見る大接戦。
参加10チーム、どのチームがメダルを取っても、ビックリもシャックリもしないのだから面白さMAXだ。
中でも、大和撫子ロコ•ソラーレーが大仕事をやってのけようとしている。
予選リーグ最終戦で、世界ランキング1位のSwissに惜敗をして、もはやこれまでのはずが、SwedenがKoreaを撃破。
上位4チームが入れる決勝トーナメントに駒を進める事が出来たのである。
更に、予選リーグの最終戦で苦渋を舐めさせられたスイスを破り、決勝進出が決まり金メダルか銀メダルが確定したのだから、全国1000万のカーリングファンも、膝小僧を抱えつつガッツポーズだ。

決勝の相手は、予選リーグを我がJAPANと同じく5勝4敗ながら、しぶとく駒を進めて来たInglez。
さて、大混戦だった『北京五輪 女子カーリング。』の覇者となるのは、大和魂の我がJAPANか、ジョンブル魂のInglezか。
優勝して、五月ちゃんの嬉し涙が見たいなるなりである。

「康成!はやく行けって!間に合わん!」
マスターが悲鳴をあげた『初音S』。
3着は外すまいと思っていた、2番人気イズジョーノキセキが5着に沈んだ。
「康成の野郎!折り合い付けるのに何をアタフタしてやがんだ。競馬学校出たてのアンちゃんじゃね〜てえの。息子の方がナンボかましだ。康成の首に縄付けて引っ張って来い!意見してやる!」
「……………………….」
新型コロナウイルス禍で6日間、口をきく相手がナッシングのマスター。
被害は当然、熊本天草出身○原さんか、K君が受ける事になる。
携帯でボヤキにボヤかれた○原さんが、K君にご注進。

「マスターさん、無茶苦茶怒ってます。」
「ほっときゃいいんですよ。馬券が当たれば自分の手柄、外れれば騎手をこき下ろすしか能がないんですから。」と突き放すK君。
「まあ、そうなんでしょうが、また、マンボウが発出。店を開ける事も出来ずニートしてるとか。ごはんと、トイレ、たまのお風呂以外は、ベットから一歩も出ないようです。陣中見舞いに行きましょうよ。LIFEで手巻き寿司セットでも買って行ったら喜びますって。」
「はい、はい判りました。洗い物が面倒ですから出前でも取りますか。『銀のさら』の安いのでいいでしょう。」
「マスターさん、口が肥えてますから。」
「どこで損するか判ったもんじゃ〜ないな。好きにしてください。」

「何だこりゃ〜?」
「何だ〜って『銀のさら』の『瑞穂』です。高いんですから。嫌ならマスター食べなくていいですよ。」
「まあ、まあ、K君も最近キツいな。そったら事云っとりゃせんじゃないの。有難く頂戴します。うん!こりゃいける。安物の寿司の割りには行ける。わざわざ、三ノ宮まで出張って2万も3万も払う事ぁ〜ねんだ。『瑞穂』7千円?8千円?安いけど旨いやね。」
馬鹿とは付き合いきれぬと、K君がソッポを向く、神戸東灘区午後5時半。
それが先週の日曜日の話しである。

「マスターさん、おはようございます。」は、熊本天草出身○原さん。
「おう!先週は気を遣わせて悪かったな。安い寿司だったけど旨かったぜ。」
「お金を出したのはK君ですから。」
「当然だろう。人が新型コロナ禍で苦しんでいるのに、1円もお給金が減ってねえって云うんだから。マニーが欲しい人はこの指とまれ!元町の場外の前で人助けやっても罰は当たらねえよ。そんな事はどうでもいいが、今年初めてのG1『フェブラリーS』難解すぎてどうしたもんかと、ずっと頭を抱えてるんだ。一つだけハッキリしているのはソダシは一銭も要らねえって事だけだ。あれも怖い、これも怖いじゃ馬券にならねえしな〜。○原さんどう思う?」

日頃、まるで競馬が判ってないと馬鹿にしている○原さんの意見を聞くなんて、混戦メンバーに頭を悩ませているマスター。
「そうですね。ソダシが要らないのは同意です。上がりが早いのはレッドルゼルとテオレーマですが、ルメールJでも牝馬は用無しでテオレーマは切ります。
後は楽勝しても、大敗してもおかしくないムラ駆けカフェファラオ、気合い充分松田大作Jのスワーヴアラミスが穴ですかね。」
「ふ〜ん。それなりに研究してんだな。まだまだ読みは甘ぇがよ。俺もこのメンバーなら距離が1ハロン長くてもレッドルゼルが頭一つだけ抜けてんじゃねえかと思う。人気が割れているから4.5も付くんだ。単勝に2万!複勝に3万。たまには川田に儲けさせて貰おうじゃねえか。当たりゃ〜『銀のさら』からまた『瑞穂』でも取るか!」
「よろしくお願い致します。」

『北京五輪 女子カーリング』顔負けの大混戦『フェブラリーS』。
勝っても五月ちゃんみたいに嬉し涙を流すような玉じゃないが、川田J決めてくれ!がマスターの切なる願いのようで。