はい!現場の大恵です

FUJII CHALLENGE

レース中の落馬事故により脊髄を損傷し、車いすで入院生活を送る藤井勘一郎騎手と先日、久しぶりに電話でお話しました。

もうすぐ退院を迎えられるとのことで
いまは車の手動運転の練習をされているそうです。

アクセルやブレーキを足で踏まなくとも
手でレバーを操作して運転できる車があると知ったのは
昨年、東京パラリンピックが開催されていた時に
NHKに出演された岸田奈美さんを偶然お見かけしてからでした。

エッセイストの岸田さんは
お母さまが病に倒れて車いすユーザーになられたとのこと。

インターネットで岸田さんのことを色々と調べていくうち
彼女が書いたたくさんのエッセイに出会い
下半身に麻痺が残るお母さまが自身で車椅子から車に移乗し
運転席から手を伸ばして車椅子を畳み、
全身と座席のリクライニングを上手く使って後部座席に車椅子を積み込む様子
そして、手動のアクセル・ブレーキ装置を知ることができました。

30年以上生きてきて、初めて知ったことたち。

車椅子の人も生きやすい世の中になればいいな
とはボンヤリ思っていても、本当に何も知らなかったのだな、と反省しました。

そして藤井騎手との電話でも
「きっと岸田奈美さんのお母さんのように、慣れれば上手に運転されるんだろうなあ」
なんて軽く考えていたら、どっこい。

「振り返ることができないので、バック駐車する時はミラーとモニターだけが頼りなんです。
これまでは振り返って直接後方を確認して駐車していたので
この感覚にもっと慣れていく必要があります」と。

あぁぁ。
たしかにそうです。
一切、後ろを振り返らずに駐車してみて、と言われたら怖くてとてもできません。
こんなところにも違いがあったんですね。

ただ、藤井騎手がすごいのは
「少しずつ手動運転にも慣れてきたので
『せっかくなので教習で近くの観光地とかに行ってみたいです』とスタッフの方に伝えたら
『それいいですね。探しておきます』って言ってくださったんです。
楽しみです」
と、置かれた環境を全力で楽しんでらっしゃること。

「こないだ大分で車椅子マラソンの有名な大会があって
世界各国から選手が来ていたんですけど
彼らは極限まで車椅子を軽量化したり空気抵抗を考えて改良しているみたいなんです」

という話も、聞いているだけで新しい世界が広がっていく感覚でした。

藤井騎手はこれまでと変わらず「FUJII CHALLENGE」を体現するようなアクティブな方なんだな、と改めて感じました。

それは、「障害を持った方とどう接していいか分からない」と無意識のうちに恐れていた自分自身への気づきでもありました。
障害を抱えていても、その人の素敵な面は何一つ変わらず、輝き続けています。

このチャレンジの先に、また競馬界に戻ってくる日がくることを願っています。