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競馬リポーター 大恵陽子が「Oh Yeah!!」と感動したレースや馬にまつわるエピソードを
馬主へのインタビューやトレセンでの取材を通してお届けします。
毎月第1週目更新!
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第15回目は、母馬ゴールデンジャックとのつながりから
注目を浴びているプリンセスジャックを
違った角度から取材してきました。
2日間にわたってお届けします。
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プリンセスジャックの母ゴールデンジャックは
サンケイスポーツ賞4歳牝馬特別(現在のフローラステークス)を勝ち
オークスでは6番人気ながら2着と健闘した馬でした。
その後は、デビュー間もない福永騎手が重賞レースで7回手綱をとりました。
そして初仔サイドワインダーは、重賞3勝。
そのうちの一つ関屋記念で手綱をとったのは
母の手綱もとった福永祐一騎手でした。
ゴールデンジャックの晩年は、産駒に恵まれない年が続いたこともありましたが
2010年、19歳の時に産んだプリンセスジャックは
母や兄の手綱をとった福永騎手が主戦となりました。
もちろん母・兄・プリンセスジャックとすべて同じ馬主です。
馬主の株式会社協栄は先代オーナーの時から
福永騎手とのつながりがあったのです。
一方、ゴールデンジャックは
娘プリンセスジャックが桜花賞に向けて調教を積んでいた3月15日早朝
心不全のためこの世を去りました。
直後の4月7日の桜花賞で
プリンセスジャックが追い込んできて3着と健闘した姿に
母ゴールデンジャックからのファンの中には
「ゴール前、泣いてしまった」
という方もいらっしゃいました。
続くオークスでは、ゴールデンジャックが2着だったこともあり
馬主と福永騎手とのつながりに加え
母と関連付けて注目されることが多かったプリンセスジャックですが
彼女自身はどんな仔なのでしょうか。
担当する加用正厩舎桜井嗣久調教助手にお話を伺ってきました。
「プリンセスジャックの第一印象は
『乗りづらいなぁ。競馬ちゃんとできるのかな』
というものでした。
ものすごく馬を怖がっていたんですよね。
乗り運動しててもなんでも。
牧場で評判は高かったようですが
『走るな』と思ったのはデビュー戦の2週間前からです。
もちろん悪くはなかったんですが
馬を怖がっていたので、逃げ馬としか考えていませんでした。
札幌デビューで、同時期に競馬場に入厩してきた
矢作厩舎の2歳馬といつも併せ馬をしていました。
その2歳馬が評判馬だったようで、たくさん取材も来ていたんですが
プリンセスジャックは併せ馬でその評判馬を全然相手にしないんですよね。
なので、新馬戦はちゃんと走れたら負けへんな、と思っていました。
ただね、新馬戦は勝ちましたが
ゲート出たら周りの馬に怯んで
直線は早め先頭で追い出したらそれにビックリしてましたが」
非常に怖がりな面を持ちながらも
素質の高さで新馬戦を勝利。
そして続く2戦目ききょうステークスでは、ゴール前の接戦をクビ差制し、優勝しました。
「これには福永騎手が一番びっくりしていました。
レース前から、調教に乗ってもらっていたのですが
トレセンでも馬がいっぱいいたら怖がって
頭反り返らせるような馬だったんですよ。
ただ、これから先を考えたら馬込みの中で競馬しないといけないし
内枠を引いたので「負けてもいいから」と、内で競馬しようと言っていました。
そしたら直線で抜けだした時には外の馬を弾いたんですよね!
勝ててよかったです。
この馬の場合、使い詰めるとよくないと思います。
この勝利で後々ローテーションが楽になり
クラシックに余裕を持って出られました。
プリンセスジャックはクラシックに出したいと思っていたので」
ききょうステークス後は
ファンタジーステークス4着、阪神ジュベナイルフィリーズ6着、チューリップ賞8着
に終わりましたが、クラシック第1戦の桜花賞では追い込んで3着と健闘しました。
桜花賞前は、グッと調子が良くなっていたんでしょうか?
「目に見えて何か良いとかはなかったですね。
カイ食いとかも別に…
乗ってる感じで『調子良いなぁ~』とは感じていました。
また、阪神競馬場は何度も来ている所だったので
馬もそこまでテンションが高くなかったです。
逆にオークスは輸送もありましたし、初めての東京競馬場で
テンションが高かったです。
この馬の場合、距離よりも調子やテンションの問題ですね」
怖がりでテンションが上がりやすいプリンセスジャックと
うまく接するコツは何なのでしょうか。
「我慢!
それしかありませんね。
牝馬は、あんまりキツく怒るとパニックを起こしてしまうんですよ。
悪いことは悪いって教えますが、
いつかできるようになればいいので、できるようになるまで我慢ですね」
プリンセスジャックにも、これまでの担当馬にも我慢を持って接してこられた桜井調教助手。
これまでに担当馬で重賞3勝されていますが
一番印象に残っている馬はどんな馬ですか?と聞くと
「そんなの全頭じゃないですか!」
という、とっつきにくそうな外見の印象とは違った(失礼!)愛情たっぷりの言葉が返ってきました。
我慢以上にたっぷりの愛情を持たれているんですね。
そんな桜井調教助手のホースマンとしての原点はオーストラリアにありました。
そして明日は、人馬の兄弟にまつわるエピソードにも迫ります。
弟達にもちょっぴり我慢している…のかも?
(明日につづく)
プリンセスジャックと桜井調教助手の奥様・息子さん