夢への第一歩

荒尾競馬ラストデー

 

 

12月23日 荒尾競馬の最後の日に行ってきました。

 

 

 

 

入場門を入る所からたくさんの人。

多くの関係者が、カレンダーを配ったりグッズを売ったり

最後の日を盛り上げていました。

 

 

オリジナルTシャツの販売を手伝う

厩舎関係者の娘さんとそのお友達

 

 

 

その中のひとつに優勝カップがずらっと並べているブースがありました。

そこには

 

「おひとり様お一つでお願いします」

 

という張り紙が。

 

 

え?!タダ??

 

一瞬その張り紙を前に、目を疑ってしまいました。

しかし本当に、調教師の奥様方が

今までレースに優勝してもらったトロフィーやカップを

無償でファンに提供していたのです。

 

 

その中でひときわ笑顔で輝いてらしたのが畑田調教師夫人。

 

 

 

 

「これ、本当に全部譲っちゃうんですか?

せっかくもらった勲章なのに・・・」

と驚き、残念そうにしている私に

 

「私たちが持っているより、

こうしてファンの方達に喜んで持っていただける方がいいから。」

とおっしゃるのです。

 

このブースを出すにあたって少なからず経費が発生しているはずです。

これらを販売して、そういった何かしらの費用に充てることもできたと思います。

しかし販売するのではなく、あくまでも無償提供。

募金箱も設置されていましたが、決して目立つ場所ではなく

奥の方にヒッソリと、あくまで善意を集めるという形で置いてありました。

 

この優勝カップをもらうために

毎朝というより、夜も明けない深夜の時間帯から調教を積み

馬に寄り添い生活をしてきました。

悔しいこと悲しいこと、もちろん嬉しいこともたくさんあったでしょう。

思い出がいっぱい詰まった厩舎が、競馬場が、今日をもってなくなってしまいます。

そんな中、数少ない思い出の詰まったカタチある物のひとつなのに・・・

 

そんな思いを馳せていると、自然と涙が滲んできました。

でも辛いのは、今日初めて荒尾競馬場に来た私なんかではなくて

間違いなく、畑田調教師夫人。

そう思い、ぐっと涙をこらえていると

畑田調教師夫人が

 

「いいのよ〜、うちにはトロフィーいっぱいあるから!」

 

と茶目っ気たっぷりにおっしゃるのです。

なんだか立場が逆転して、私の方が励ましてもらってしまいました。

 

 

ブースから立ち去る時

 

「スタンドは寒いから、風邪を引かないように気をつけてね!」

 

という言葉に、初めてお会いしたのに母親のようなあたたかさを感じました。

 

 

 

しばらくしてから

 

「もう少し畑田さんとお話したかったなぁ」

 

と思いながら先ほどのブースに戻ってみましたが

すでに賞品はすべてなくなり、

畑田調教師夫人のお姿も見えませんでした。

 

 

一期一会

 

 

一瞬一瞬の出会いを大切にしないといけないなぁ

と少し後悔しながらパドックに立っていると

トントン、と誰かが背中を叩きます。

 

 

はて。知り合い来てたっけ?

 

と振り返ると、そこには畑田調教師夫人が!

 

「あちこち探したのよ〜!

このハッピ、あなたにあげようと思って!」

 

ブースでのイベントの時に奥様方がお揃いで着てらしたハッピ。

それをわざわざ私に渡すために畑田調教師夫人も私のことを探してくださっていたのです。

 

 

ご主人の畑田調教師のことを聞くと

 

「うちのお父さん、今日の最終レースにも馬を出してるのよ。

荒尾では最も長く調教師をやってるうちの一人じゃないかしら。

ほら、この馬!」

と私の持っていた競馬新聞を嬉しそうに指差します。

 

その表情といったら本当に誇らしげで、

こちらまで嬉しくなっちゃうほどでした。

 

残念ながら最終日に畑田厩舎は勝利を収めることはできませんでしたが

畑田厩舎の馬たちの応援馬券は、私の宝物であり誇りです。

 

 

いよいよ最終レース後のグランドフィナーレのセレモニーも終わった後。

やはり畑田調教師夫人は笑顔で

 

「あなたも元気でね!」

とやさしいお母さんのように声をかけてくださいました。

 

 

「お父さんはこの後、牧場に行くの」

 

一度もお会いしたことのない畑田調教師。

でも今度は、その技術で牧場から競馬界を支え、盛り上げていただきたい、

そしてそのことが心強く思える、

そんな畑田調教師夫人との出会いでした。