トウカイトリックと大平助手
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競馬リポーター 大恵陽子が 「Oh Yeah!!」と感動したレースや馬にまつわるエピソードを
馬主へのインタビューやトレセンでの取材を通してお届けします。
毎月第1週目更新!
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第11回目は、12月のステイヤーズステークスで競馬ファンをびっくりさせた
おじいちゃん馬トウカイトリックと担当の大平助手です。 =============================================
「考えてみたら、年明けて11歳やもんね!」
担当の大平助手でさえそうおっしゃるトウカイトリック。
昨年12月には10歳にしてステイヤーズステークスを制しました。
年を重ねても活躍するその背景には
なにか秘訣があるんじゃないか?
そう思い取材に伺いました。
「秘訣?ないですね~!
丈夫なんですよ、馬が。」
私の思惑は、一蹴されてしまいました。
脚元、体、全体的に悪いところがなく
今まで故障等で休養したこともないその丈夫さが
息の長い活躍の一番の秘訣のようです。
その丈夫さを物語るひとつにオーストラリア遠征があります。
8歳の秋にオーストラリアに遠征し2戦。
結果は残せませんでしたが、
季節が真逆の南半球で、たった1頭戦い抜いてきました。
当時は
「検疫~オーストラリアに着いてしばらくの計3週間ほどは
馬に会っていなかったので、久しぶりに馬に会った時は
「馬やーっ!!」って感じにすごく喜んで
立ち上がったりしていました。
普段は寂しがり屋なとこもなく、しっかり自立しているんですけどね。
やっぱりずっと1頭で不安で、精神的にもきつかったんでしょう」
輸送も、メルボルンへの直通便がなく
香港経由で約18時間かかったそうです。
それでも帰国してからもコンスタントに走り続け、
活躍しているのですから、精神的にも肉体的にも丈夫なんですね。
そんな百戦錬磨、競走馬としてベテランの域に入っているトウカイトリック。
普段はどんな馬なんでしょうか?
「トリックは、僕より自分のほうが上やと思ってるんです。
召し使い的に思ってるんでしょうね、強気に出てきますよ。
アゴで「オ~イ!」って感じにつついてきます。
最初にトレセンに来た頃は右も左も分からん感じで
ボーッとしてて、大人しい子でした。
それが年をとると…笑」
そうおっしゃる大平助手もこの道のベテラン。
おじさんが馬運車の運転手をされていたり、競馬はそう遠くない世界でした。
知り合いからの紹介で「やってみようかな」と思い
この世界に入って28年。
担当馬の重賞勝ちは
「嬉しい!」よりも「ほっとする」とおっしゃいます。
「その馬の元々持っている素質を、なるべく出せるよう
マイナスを少なくしてあげたい。
勝てるものをもっているから、勝たせてあげたいんですよね。
だから重賞を勝つと、気持ち的に余裕ができます。」
昨年末のステイヤーズステークスは
「調子が良かったので
ぶっちゃけ、掲示板はのるんじゃないかと思っていました。
メンバー的にも、自分たちも含めてだれが来てもおかしくなかったので。
とは言っても、さすがに勝つまではさすがにないと思っていたのでびっくりしました。」
2頭の三冠馬と戦ってきたトウカイトリックは
この春も現役続行予定です。
もしかしたらまた、私たちそして大平助手をびっくりさせるかもしれません。