ダコールと河嶋助手
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競馬リポーター 大恵陽子が 「Oh Yeah!!」と感動したレースや馬にまつわるエピソードを
馬主へのインタビューやトレセンでの取材を通してお届けします。
毎月第1週目更新!
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第10回目は週末の日経新春杯に出走するダコールと 担当の河嶋助手です。 =============================================
22戦して掲示板をはずしたのはたった1回だけ。
とても堅実な走りをするダコール。
しかし、競走馬としてデビューできないかもしれない…
そんな危機に瀕していたことがありました。
それは当歳の夏前。
首の骨を折ったのです。
母アジアンミーティアも管理していたことから
産まれた時から中竹厩舎に所属することが決まっていたのですが
当時中竹調教師も
「ダメかもしれない・・・」
と思ったそうです。
ところが、前田オーナーの
「可能性があるなら、やってみよう」
という一声の下
牧場スタッフ、獣医師の懸命の努力で奇跡的な回復を見せ
2歳の6月頃には
「競走馬としてデビューできるかもしれない」
というところまで漕ぎ着けたのでした。
ダコールを担当する河嶋宏樹持ち乗り調教助手は
競馬学校に入る前、新冠のノースヒルズマネジメントで3年半勤めていたこともあり
夏の北海道出張の際、遊びに行っていたそうです。
「ダコールが首の骨を折って1ヶ月ほどした頃だったと思います。
馬房でずっと寝てるか、放牧に出せても小さなパドック程度でした。
馴致もだいぶ遅れて、放牧時間も明らかに他の馬より短かったと思うんですが
すごいです!」
晴れて競走馬としてデビューした奇跡の馬ダコールは
新馬戦を圧勝。
しかしその後は掲示板をはずさない堅実な走りはするものの
勝ちきれないことが7戦続きます。
焦りはなかったのでしょうか?
「いや~、半分ネタのようになってましたね。
いつか勝てるやろって思ってましたから。」
見事2勝目を挙げると、昇級初戦でもいきなり2着。
その後クラスが上がっても初戦から結果を残すなど堅実な走りを続けます。
しかし河嶋助手は
「ジョッキーからしたら乗り難しい馬だと思いますよ。」
とおっしゃいます。
これだけ安定した成績を残しているのに
どういうことなのでしょうか。
大仲でインタビューをしている最中
ちょうど後ろで週刊競馬ブックを読みふけっている
元騎手の船曳文士攻め専調教助手がいらしたので
その点について伺ってみました。
「そうですね。
レースでは乗ったことないですが、
レースぶりを見たり、調教で乗った感じでも 「難しいな」と思います。
走る馬なんですが、ラストの持ち味を生かすため
スタートしてからいかに上手くもっていくかが難しそうですね。
この馬のリズムで、リラックスして走らせることが重要になってくるんじゃないでしょうか。
たとえば、道中行きたいポジションがあっても、行ってしまうともうダメですね。
そして仕掛けのタイミング。
早すぎるとラスト脚が上がってしまうし、遅いと届かない。
それと、手応えに騙される。
伸びると思ったら、それほど伸びなかったりするんです。
まくっていった時点でもう脚を使ってしまってるんでしょうね。」
見た目の成績以上に、難しい子なのかもしれませんね。
ところで、首骨折の後遺症はないのでしょうか?
「特に、ないですね。
見た目には、残っていますが。」
首の中ほどがボコッと出ているのがわかりますでしょうか。
河嶋助手はこう続けます。
「色んな苦労があったと思います。
初めて跨る人、初めて15-15出す人、みんな怖かったと思います。」
牧場からのバトンを受け、河嶋助手は日々ダコールに愛情を注いでいます。
ただ、最近はダコールがかまってくれないこともあるとか。
「以前はどれだけ触っていても大丈夫で、
マッサージをしていたら寝ていることもあったほどなんです。
それが最近では・・・。
馬房で休んでいる時なんかは、触っても耳を伏せたりします。
自我がでてきたのかな?!
「大人になったんやな…」と寂しい親心です。」
そんなダコールを
「ダコちゃーん、Take2撮るよ~」
と呼んできてくれて撮った写真がこちら。
右が担当の河嶋宏樹持ち乗り調教助手。
左は船曳文士攻め専調教助手。
お二人ともピースをして、ファンの記念撮影みたいです。笑
最後に河嶋助手はこんなことをおっしゃっていました。
「前田オーナーの馬で、ウチの厩舎はまだ重賞を勝てていないんです。
ダコールで勝てたら最高ですよね。
僕は高校卒業後BTCで研修中に
実習でノースヒルズマネジメントに行きました。
まだ馬乗りを始めて3ヶ月ほどの素人同然の僕でもすぐに馬に乗せてもらえて。
失敗しても、一生懸命やっていれば怒られない。
そして次の日もまた乗せてくれる。
色んな経験ができそうだと思い、
BTC修了後ノースヒルズマネジメントに勤務しました。
繁殖牝馬もいたので、お産にも立ち会うことができて
本当に色んな経験をさせてもらいました。
そんな元勤務先のノースヒルズマネジメントの生産馬。
携わった人たちの顔もみんな知っています。
この馬で、重賞を取れたら…」
ダコールにはジンクスがひとつあるそうです。
それは、レースになると雨が降る。
レースの前の日であったり、当日であったり、
雨が降り、馬場が緩んでいることが多いのだとか。
「スピード馬場の方がダコの持ち味が生かせる」という河嶋助手の願いは
今週末の天気に届くのでしょうか。
日曜日、日経新春杯に出走です。