北新地競馬交友録

改元

『平成』に代わる新元号は『令和』。
菅義偉官房長官が記者会見で発表し、皇太子さまが新天皇に即位される5月1日午前0時に改元される。
改元と云えば、「新元号は平成であります」。
ブッチホンと呼ばれる前、まだ官房長官だった小渕恵三が、平成の二文字が書かれた色紙を掲げた姿をリアルに覚えているのは40歳以上の方であろう。
そんな『平成』元年、世の中の流れと歩を合わせるように、競馬界でもニュースターが誕生した。

「今年の『天皇賞』はつまんねえぜ。西低東高で関西馬はまるで用無しだ。軸は幸雄のスルーオダイナでなんもねえ。去年暮れの『ステイヤーズS』、今年に入ってからは『ダイヤモンドS』を、トップハンデ何するものぞで勝利。『阪神大賞典』では進路妨害で失格の憂き目に遭ったが、長距離での抜群の安定感はハンパねえぞ。相手も『アメリカンジョッキーC』と『日経賞』をぶっこぬいた、泰夫のランニングフリー。後は本格化した政人のコクサイトリプルまで。関西馬、敏文のカツノコバンや、優のゴールドシチーじゃ〜逆立ちしてもスルーオダイナに勝てやしねえ」

「若武者豊のイナリワンがいいんじゃないかってか?お父さんまるで競馬が判ってねえな〜。あったら馬、大井で泥〜にまみれてョ〜から中央へ転厩。楽勝しなきゃいけねえ『すばるS』で4着。『阪神大賞典』ではスルーオダイナのひと睨みで、ど〜もすいませんの5着だ。全然足りねえだろう。地方から来ていきなりG1が取れるほど、中央の水は甘かねえ。もう6歳だろう、来るのが遅え!来るのがョ〜。スルーオダイナの2枠から、ランニングフリーの8枠が大本線。コクサイトリプルの7枠を押さえりゃお帳面のレースだ」
聞かれてもいないのに、長講釈はマスターの昔からの悪い癖である。

「直線コースに向いた!先頭は僅かにランニングフリー!イナリワン内から!イナリワン内から!ミヤマポピーが外から差して来た!さらにはプレジデントシチー!お〜外!お〜外からウェルネスが突っ込んで来る!イナリワン先頭!イナリワン先頭!リードを3馬身!4馬身と広げた!2番手争いはミスターシクレノン!イナリワン独走!リードを5馬身!6馬身と広げてゴールイン!武豊やりました!」

1着 イナリワン 武豊J
2着 ミスターシクレノン 河内洋J
3着 スルーオダイナ 岡部幸雄J
枠連1ー7 3320円

「なんなら!イナリワンの野郎!すばると阪神大賞典で猫被りやがって!アッタマ来るぜ。武豊様々だってか。はい、はい、お父さんおめでとう。そりゃ〜デカ鼻太から売り出し中、若武者豊への乗り替わりだから少しは気になったが。え!幸雄の馬鹿!8馬身も離されてんじゃねえか。しかも2着が16番人気のミスターシクレノン。出てたのかョ〜そんな馬。こったらいい加減ならレースをしてたら競馬に明日はねえョ」
明日はないのは自分で、競馬は日本が消滅する日まで続くのだが………。

元号が『昭和』から『平成』にかわり、武豊Jがニュースターの道を堂々と歩みだした。
1989年、もう30年も前の話しである。