北新地競馬交友録

天命

今上天皇、皇后両陛下が伊勢神宮を訪れられ、内宮と外宮を参拝し、退位を報告する『神宮に親謁の儀』に臨まれた。
その今上天皇の曽祖父となられる明治天皇が詠まれた御製で有名なのが、「よもの海 みなはらからと 思ふ世に など波風の たちさわぐらむ」
この御制を昭和天皇は、大東亜戦争の開戦を決定した御前会議で、懐から短冊を取り出して詠みあげられた。
今上天皇は、平成にどのような思いを持たれておられますか?との記者の問いに、「戦争の災禍に会う事がなかった、それを心より嬉しく思います」とのお応え。
まさにその通りで、今上天皇が、三度目の「よもの海………..」と詠みあげられる事がなかったのは結構な事である。

この冒頭の『よもの海』、実はChinaの孔子が『論語』の中で使った語彙。
司馬牛憂曰、人皆有兄弟、我獨亡、子夏曰、商聞之矣、死生有命、富貴在天、君子敬而無失、與人恭而有禮、四海之内、皆爲兄弟也、君子何患乎無兄弟也。
「みんなは兄弟と仲良くやっているのに、私だけが兄弟が居ない」と嘆く司馬牛に、子夏は、「私は生きるも死ぬも、富も尊きも全ては天命だと聞いています。もし人格者たるべき者が他者を敬って落ち度が無く、恭しく振舞って礼に違うことがなければ、この世の全てが彼の兄弟ではないでしょうか。どうして兄弟が居ないと嘆く必要がありましょうや」と諭したのだ。
そう全ては天命なのである。

「今年の『皐月賞』は悩ましい。どいつもこいつも口を揃えて、サートゥルナーリアは物が違うと云ってんだろ。オッズも1.7だぜ。ヴェロックスに跨るリーディングJの将雅までが『 ライバルというのも失礼かなと思いますけどね。1頭、抜けていると思いますから』だってョ。 俺ぁ〜小頭数、内に入れてどっこい正一で抜け出すセコいレースっ振り。そったら強えとは思えねんだ。メイチで追った時にドンだけ〜!のイッコウさんで伸びるかどうかなんて誰にも判らねえだろが」

「じゃあサートゥルナーリアを切るんですね。さすがマスター!勇ましいな〜」の競馬友達K君に。

「バ!バッキャロー!そったら危ねえ事出来る訳なかろうもん。買うョ、ええ買いますともサートゥルナーリア様をョ。発表!枠連!屋根が圭太で不安しかないがダノンキングリーとの2ー6が本線で5万。今年はパッとしねえがデムーロのアドマイヤマーズとの1ー6に3万、将雅のヴェロックスとの4ー6に1万と9千5百。タテ目1ー2に2万でいてこます」と結論付けて、おっかなビックリで、土曜日の儲けと1週間の予算を合わせて、119500円を張り付けたのだが………..。

「ヴェロックス先頭に代わって直線!その外からサートゥルナーリア!アドマイヤマーズ3番手!内からダノンキングリー!馬場の4分どころ追われてサートゥルナーリア!サートゥルナーリア先頭!内食い下がるヴェロックス!サートゥルナーリア僅かに先頭!サートゥルナーリア!ゴールイン!2着はヴェロックスかダノンキングリーか!この2頭の争いだ!サートゥルナーリア!まず一冠奪取」
「2着はどっちだ!」と1着になったサートゥルナーリアそっちのけで、競馬友達K君に、怒鳴りつけるように聞いたマスター。
「戸崎Jの身体が前に出ているようにみえましたが、馬はサートゥルナーリアの陰で見えませんでした。あ!審議です。審議ですよ」

「上位の馬が関係しています」のアナウンス。
位置取りを考えればサートゥルナーリアか、ヴェロックスが対象。
電光掲示板に2着がヴェロックスで、ダノンキングリーは3着で点灯した。
「げ!圭太の野郎!なんちゅうド下手なんだ。あ〜あ情けねえったらありゃしねえ。珍しくど根性出してインに突っ込んだから褒めてやろうと思ったのにヤメだ!ヤメだ!」
ダノンキングリーとの枠連2ー6は5万円持っているが、ヴェロックスとの4ー6は1万9千5百円しか持っていないもんだから、頭から湯気出して怒っている。

「対象はサートゥルナーリアですね。直線でヨレてヴェロックスに当たってます」は、熊本天草出身○原さん。
「そったらもん関係ねえョ。矯正のムチ入れてるし、サートゥルナーリアを降着にする気合いがある訳ないじゃんか。将雅もなんなら!ライバルと云うのは失礼だなんて云いながら、シャカリキになりやがって。圭太に花持たしたらんかい!圭太にョ〜」
枠の2ー6ならば、払い戻しが24万円、4ー6では13万円とチョイ。
「たわけ!圭太のせいで11万落とした!」とマスターが地団駄を踏む、神戸元町ウインズ午後4時前。
土日合わせて儲けは僅か3万円余り。
やられる時は10万円ストレートで、儲ける時は片手以下ではどうしようない。

マスターが競馬で儲けられないのは…………………..天命なのかね〜|( ̄3 ̄)|