北新地競馬交友録

カタルシス

林檎や西瓜に美味しいのが出来る年、所謂当たり年があるが、実はシネマにもある。『レオン』『シンドラーのリスト』『スピード』『パルプ・フィクション』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『ショーシャンクの空に』
これだけの名作が僅か一年の内に公開された1994年はまさにシネマの当たり年であった。
中でも未だに「あなたの心に残るシネマは何ですか?」とのクエッションに、『ショーシャンクの空に』と答える方が少ないない。

若くして銀行副頭取を務めるアンドリュー・デュフレーン が、妻とその愛人を射殺した罪に問われる。
当然無実を訴えるも終身刑の判決が下り、劣悪なショーシャンク刑務所への服役。
囚人や看守によって日々繰り返される理不尽な環境に耐え、少しでも改善されるよう奮闘するアンドリュー・デュフレーン。
その一方で、約20年間ロックハンマーで壁を掘り続けついに脱獄。
所長の不正蓄財を引き出すと同時に告発状を新聞社へ送り、メキシコへの逃亡に成功する。

ラストは抜けるような青い空と海が広がるメキシコの海岸で、アンドリュー・チェフレーンと囚人仲間のレッドが再会。
散々苦しんだ地獄のショーシャンクを抜け出し、彼らを苦しめた者たちに悪事のつけを払わせしかも自由を謳歌する2人。
シネマを見ていた観客の、ずっと溜まってきたもどかしい思いが吹き飛び、カタルシスに浸り切れるシーンは特に秀逸である。
そんな『ショーシャンクの空に』が公開された1994年、競馬でもカタルシスを存分に味わう事が出来たレースがあった。

「毎年迷いに迷う『オークス』だが、俺ぁ〜今年だけは何の迷いもねえ。貞博とチョウカイキャロルで心中だ。何が気に入らねのかは知らねえが、戸山為夫調教師が死んで後を継いだ新米調教師が、ダービージョッキーの貞博を干してやがんだぜ。それを見かねたのが兄弟子の鶴留調教師。「貞博!漢になりない!」でチョウカイキャロルの手綱を託したって訳だ。そこのおとっさん!人間てぇのはとどのつまりは義理人情だ。年明けのデビューから早くも5戦目。『桜花賞』をゲットしてノリノリ豊のオグリローマンと比べたら分は悪いかも知んねえが、そったら事は関係ねえ。あるだけ単勝にぶち込んじゃる」と聞かれてもいないのに長講師はマスターの悪い癖だ。

「第4コーナーから直線!メモリージャスパー!チョウカイキャロル2頭が先頭!」
「どりゃ!サダヒロ!サダヒロ!サダヒロ!押しまくれ!サダヒロ!」梅田ウインズの床も抜けんばかりの声援を送るマスター。
「400を通過!ツルマルガールが追い込んで来る!オンワードノーブル接近!メロウフルーツは一杯だ!先頭は内チョウカイキャロルかメモリージャスパーか!お〜外!アグネスパレードとゴールデンジャックが急襲!残り200を切った!大きく広がった!メモリージャスパー!チョウカイキャロル!アグネスパレード!ゴールデンジャック!残り100!チョウカイキャロル先頭か!チョウカイキャロル先頭か!1馬身リード!大外アグネスパレード!ゴールデンジャック並んでゴールイン」

1着 チョウカイキャロル 小島貞博J
2着 ゴールデンジャック 四位洋文J
3着 アグネスパレード 河内洋J
単勝470円
「取った!やったど!サダヒロ!日本一」
単勝馬券を高々と突き上げた刹那、最高のカタルシスに包まれたマスター。
1994年、綺羅星の如き素晴らしいシネマと、泣けるぐらいハートを揺さぶられた『オークス』が行われた年であった。

それにしても最近はパッとしないな〜マスター。
たまには馬券突き上げてみろよな٩( ᐛ )و