北新地競馬交友録

メイクドラマ

プロ野球のオープン戦真っ盛り。いよいよ待ちに待った野球の季節が近づいて来た。今年はどんなドラマが待っているか楽しみの一言であるが、プロ野球のドラマと云えば、少し年季の入ったファンの脳裏に浮かぶのは『メイクドラマ』であろう。

1996年のシーズンは中盤まで首位が広島で、巨人は首位に最大11.5ゲーム差をつけられ、普通ならまず絶望的な状況。しかし、11ゲーム差で迎えた7月9日の対広島戦で、2回二死走者なしから9者連続安打で一挙7点を奪って勝ったのを機に、巨人の快進撃が始まった。

7月16日の対中日戦でチーム40勝を達成、その後もゲーム差を縮めていき、100試合目で首位に立つ。そして、10月6日の対中日25回戦を5ー2で勝利し、巨人のリーグ優勝が決まった。11.5ゲーム差をひっくり返し、ここに『メークドラマ』が完成したのである。監督はもちろんミスタープロ野球長嶋茂雄監督であった。

「こったら穴党の馬券愛好家にとって面白くねえ『阪神大賞典』はねえだろうが、どこまで走っても、成貴のマヤノトップガンと豊のナリタブライアンの一騎打ち。他の馬はオリンピック精神ってところだろう。俺ぁ〜グリグリが付いてたら大喜びの口だから、馬連が200円なら上等だ。3万ぐれぇご祝儀と行くか」と、聞かれてもないのに講釈を垂れるのは、マスターの昔からの悪い癖である。

「マヤノトップガン!ナリタブライアン!並んだまま第4コーナーから直線!先頭はナリタブライアンか!マヤノトップガンか!2頭の叩き合い!後続とは3馬身!4馬身!5馬身!もう後ろは関係ない!内マヤノトップガン!外ナリタブライアン!200を通過!マヤノトップガン内から出る!負けじと外からナリタブライアン!2頭全く並んだ!首の上げ下げ!さ〜どっちだ」

1996年『第44回阪神大賞典』
1着 ナリタブライアン 武豊J
2着 マヤノトップガン 田原成貴J
3着 ルイボスゴールド 坂口重政J
馬連210円
複勝110円、110円、550円
3コーナーから早くもスクランブル発進のマヤノトップガンに、負けじと馬体を併せながら上がっていくナリタブライアンの一騎打ち。6万人が詰めかけた阪神競馬を興奮の坩堝に叩き込んだ名勝負であった。

長嶋茂雄監督が11.5ゲーム差をひっくり返したのが『メイクドラマ』なら、田原Jと武豊Jの一歩も引かない意地のぶつかり合い、これまた『メイクドラマ』
何とも記憶に残る1996年の出来事だ。