北新地競馬交友録

価値ある銀メダル

2月9日開幕の『平昌オリンピック』まで2ヶ月と少しだが、まるで盛り上がる気配がない。
半島情勢の不透明感もさる事ながら、お隣の国同士、仲良くしなければいけないのに、例のサンフランシスコの事件に象徴されるように、いつまで経っても関係が改善されないからだ。
KOREAの方々皆んなが皆んな、我がJAPANを目の敵にしているかと云えば、決してそんな事はない。
2016年、訪日した外国人の統計では、Chinaに次いで2位だが、一位の600万人に対して、500万人を超える方達が訪れている。
これは人口比率で考えれば、とんでもない数字になる。
バット!日本人がKOREAを訪れる数は年を追うごとに減少。
昨年はやや回復基調になったが、それでも『ヨン様ブーム』の頃から比べるとおおよそ半数を少し越えたぐらいで推移している。

そんなこんなで、開催国であるKOREAにいい感情を持っていないのも『平昌オリンピック』への関心が高まらない要因の1つだが、もっとも大きい理由は、とにかくウインタースポーツに弱いのである。
冬季オリンピックの最大メダル獲得数は、自国で行われた『長野大会』が最大で、金銀銅合わせて10個。
最近では競技数が30も増えているのに、ソチの8個で大健闘。
『トリノ大会』などは1個デンデンと云うのだからお話しにならない。
では、夏季オリンピックはどうかと云えば、直近の『リオ・デ・ジャネイロ大会』は金だけで12個。
『アテネ大会』では、ニャンと!16個も獲得しているのである。
まさに永吉矢沢のゴールドラッシュだ。

その『アテネ大会』で注目を集めたのが、トビウオ日本の競泳陣。
なかでも、平泳ぎ100mと200mで金メダルを獲得した北島康介だ。
大した!たまげたアスリートなのは間違いないが、バット!どうにも虫が好かないところがある。
まずはあのもみあげ、更に「ちょー気持ちいい」「何も言えねえ」などと云う軽佻浮薄な言葉遣い。
愛読者が漫画の『ONE PIECE』と云うのも泣けるところだ。

そんな北島康介とは対照的なのが、『アテネ大会』バタフライ200mで銀メダルを獲得した山本貴司。
大阪市住之江出身、過去2回オリンピックに出場するも予選落ち。
それでも挫ける事なく挑んだ『アテネ大会』で漢になった。
顔は競泳よりも鍬を持った方が似合うカントリーボーイ風で、近畿大学附属高校から近畿大学商経学部と云う経歴も、関西人なら誰しもが親しみを抱くところである。

「めちゃめちゃ、うれしいです。過去、2回、オリンピックには出てますけど、前回は得意の200メートルで決勝に残れず、悔しい思いをしました。この日のためにだけ、4年間、一生懸命練習してきました。ようやく、最高の結果を残せたと思います。」と喜びを爆発させた。
「銀なんでしょ。金の方が上ですよ」ごもっともと云いたいところだが、左にあらず。
敗れた相手が『水の怪物』はたまた『ボルチモアの弾丸』と云われたマイケル•フレッド•フェルプスなんだから仕方がない。
メダルの色だけじゃない、その中身が大切なのである。

少しばかりキャリアの長い競馬ファンに「北の怪物と云えば?」と聞けば、すかさず帰って来るのは、もちのロンで「コスモバルク」
地方競馬のホッカイドウ競馬に所属しながら中央競馬や日本国外のレースに挑戦をし続け、最後は北海道の方言で云うところの『ほっちゃれ』になるまで競走馬としての闘いを全うした。
(『ほっちゃれ』とは、川に戻り産卵を終えたサケやマスの事を云い、肉がやせ味が落ちるため、食いしん坊の熊でも食べないところから来ている)

『皐月賞』では1番人気もダイワメジャーに敗れる。
返す刀の『ダービー』では2番人気に支持されたが、最初の600メートルを34秒4、1000メートルを57秒6と、当日の高速馬場を考慮しても速いペースで逃げたマイネルマクロスを追いかける形になり、4コーナーで先頭に立つも直線では余力がなく、キングカメハメハから1.2秒差の8着に終わった。
トライアルを必死で勝ち上がり挑んだ『菊花賞』では、3コーナーの下り坂で外から上がってきたモエレエルコンドルに被せられ、掛かって先頭に立ってしまう。2周目4コーナーでスパートをかけるも、いっしょに上がってきたデルタブルースに交わされ、0.3秒差の4着に敗れた。

強いのは間違いないが、どうしても大きなレースになると勝ちきれないばかりか、欲求不満が溜まるレースしか出来ないコスモバルク。
そんなコスモバルクが1番輝いたレースがその年の『ジャパンカップ』である。
2004年だから、今を遡る事13年前。
鞍上は若きフランスの色男クリストフ•ルメールであった。
競馬ファンはそのレースでコスモバルクのど根性を目の当たりにする事になる。

「4コーナーをカーブして直線!コスモバルク先頭か!コスモバルク先頭だ!真ん中を割ってポリシーメーカー!更にゼンノロブロイが突っ込んで来た!ナリタセンチュリーは外から!お〜外からパワーズコートも来ている!先頭はここでロブロイ!ゼンノロブロイ!ポリシーメーカー食い下がる!コスモバルクは内でどうだ!先頭はゼンノロブロイ!ゼンノロブロイ!ポリシーメーカー2番手!ゼンノロブロイぶっちぎった!これは強い!ゼンノロブロイ先頭でゴールイン。2着はコスモバルクか!」

逃げるマグナーテンの直後に付けたコスモバルク。
名手ルメールに導かれ掛かるところも見せず最後の直線に入り逃げ切り体制も、ペリエのゼンノロブロイの豪脚に屈する。
凄いのはいったん交わされたポリシーメイカーを差し返した事である。
下級条件ならまだしも、外から被されて一旦交わされたら、普通の馬ならひとたまりもないのが競馬。
火の玉のど根性でそれを差し返したんだから並の馬には出来ない芸当である。

「取ったど〜!5ー5だ!5ー5。コスモバルクは凄え馬だぜ。こったら競馬見た事あっか?え!おとうさんよ〜」
梅田ウインズで、知らないおじさんの肩をバンバン叩きながら、興奮冷めやらぬマスター。
遠い昔とは云わないが、随分と前の話しだ。
金メダルが1番なのは間違いないが、それに負けず劣らない銀メダルがある事を教えてくれたコスモバルク。
まさに北の怪物なのであった。

今年も『ジャパンカップ』がやって来る!