北新地競馬交友録

負けると云う事について

リオデジャネイロ五輪5日目、女子63キロ級3位決定戦で、田代未来ちゃんがヤーデン・ジェルビと対戦したが、優勢負けでメダルをゲットする事が出来なかったm(._.)m
お家芸復活で初日からの、メダルのバトンリレーが途切れたのだ。
インタビューでは、「たくさんの方々が支えてくれて、背中を押してくれたのにも関わらず、こういう結果になってしまって本当に申し訳なく思ってます。勝たなきゃ意味がない」と悔し涙を流しながら言葉を絞り出していた。
お調子者の「なんもいえねえ!」なんて馬鹿丸出しの発言よりは、後悔と苦渋に満ちた敗者の発言は、よほどハートに突き刺さるのである。

沢木耕太郎のルポルタージュ『敗れざる者たち』
スポーツの世界を舞台に「負けるとはなんぞや」をテーマにした珠玉の短編が並んでいる。
燃え尽きることの出来ない戦いを繰り返すボクサー、カシアス内藤を自分に重ね合わせた『クレイになれなかった男』
長嶋茂雄と同じ時代に巨人軍に内野手として入団し、三塁の座を競った選手にスポットを当てた『三人の三塁手』
東京五輪マラソン銅メダリスト「円谷幸吉」の悲劇的人生を描いた『長距離ランナーの遺書』
良血馬を相手に、恐ろしまでの張り詰めた走りで頂点を目指す『イシノヒカル、お前は走った!』
ミスターオリオンズと呼ばれた榎本喜八が、二千本安打を達成しながらも、次第に心を病んでいく『さらば 宝石』
ボクサー輪島功一がもがき苦しみながらもリングに立ち続ける訳は『ドランカー<酔いどれ>』

選ばれたスポーツ選手は、試合と云う舞台で勝ち負けがハッキリするが、市井の人間にも勝ち負けはある。
小さな勝ち、小さな負け、大きな勝ち、大きな負けを飽くことなく繰り返し、やがて終焉を迎える。
勝ちと負けは紙の表と裏である。
ちょいと風が吹けば、表裏は簡単にひっくり返るのだ。
「座右の銘は、泰然自若、一喜一憂しない事です」などと小賢しい事を云う輩がいるが……大いに喜び、大いに悲しみ、ささやかに喜び、ささやかに悲しもうではないか。
それが大きな意味で、人生を味わうと云う事ではないかと思うである。

「も〜やられまくって、馬券を買う気がしねえ」
わずか5日間で30万円もやられて青息吐息のマスター。
よしゃあ〜いいのに、まあまあ愉快な仲間達に尻をかかれて『レパードS』を買うはめになってしまった(≧∇≦)
「ケイティブレイブ、グレンツェントの2頭が人気だろう。バット!そうすんなり決まるとは限らねえ。ケイティブレイブは前々でレースを運ぶし、屋根が豊大明神だから大崩れは考えにくいが、後ろから差して来る圭太のグレンツェントが絶対来るって保証はねえよ。とは云うものの、後、可能性があるのは『ユニコーンS』でグレンツェントとタイム差なしの4着ピットボス、まだ底を見せてないデムーロのネクストムーブまで。この4頭立てのレースで、他の馬は申し訳ねえがオリンピック精神だろう」
◯屋崇信幼稚園ひまわり組の真司君でも判る能書きを垂れるとは、つくづく人間がめでたく出来ている。

「買い目は5枠が厚いから、2ー5、4ー5、5ー5。行った行ったで2ー4まで押さえればパーペキだ。オッズはどうなってる?」
「単勝はケイティブレイブが2.4倍、グレンツェントが2.9倍この2頭に人気が被ってますね。ピットボスが12.3倍、ネクストムーブが5.5倍です」
「え!マジカル!ピットボスがそんなに付くのかよ〜。滅茶苦茶美味しいじゃんか。ピットボス1頭軸3連単マルチ、相手はネクストムーブ、ケイティブレイブ、グレンツェントの3頭18点一目2千5百、保険で凸凹付けて枠連で2ー5、5ー5、2ー4を1万、4ー5を2万5千これで取れる!一個小隊張り付けちゃる!」とガッツポーズを決めたのだが………。

「残り400を通過!直線コースに入りました!
ケイティブレイブ先頭!後続に3馬身から4馬身のリード!」
好発を決めた武豊Jのケイティブレイブが楽に逃げを打つ展開。
番手で虎視眈々のピットボスだが直線に入って脚色が鈍るのを見たマスター。
「どりゃ!ウチパク!ウチパク!この野郎!追えよ!腕折れてもいいから追え!」と神戸元町ウインズの床を鳴らしながらまたまた半狂乱だ。
「外からグレンツェント!内ピットボス!」
「馬鹿野郎!それでもいい!そのままだ!」
「後ろからレガーロが追ってくる!グレンツェントが前を追う!更にレガーロ!レガーロ!3番手争い!外から突っ込んで来た!先頭ケイティブレイブをグレンツェントが捉えた!ゴールイン!楽々と差し切りました」

1着 グレンツェント 戸崎J
2着 ケイティブレイブ 武豊J
3着 レガーロ 田辺J
4着 ピットボス 内田J
ゴール前、頼みのピットボスがレガーロに差されて3連単はパー。
的中は枠連4ー5のみで、払い戻しは5万7千5百円、10万円張って結局4万2千5百円のガミ興行とは泣けくる。
「マスターさん!当たりましたね」
「テメー!それマジで云ってんのか?俺に喧嘩売るなんて上等だぜ。成敗してやっからそこへ直れ」
熊本天草出身68歳◯原さんをぶん殴るぐらいの剣幕に、K君が慌てて取りなす神戸元町ウインズ午後4時前。
下がっちゃ怖い柳のオバケとはこの事である。

定番、台湾料理『◯玉食堂』での反省会。
「マスター、お怒りはごもっとも。ガミはガミですが、とにかく当たったんですから良しとしましょう」と競馬友達のK君。
「まあな、ひょっとしたら当たり馬券なんて売ってねえと思ってたからよ〜。これで当たり馬券が売ってる事は確認出来た。しかしウチパクの野郎だけは許せねえな。あんなシャカリキに豊大明神の馬を追いかける事ぁねえ〜んだ。だから最後垂れて差されちまうんじゃねえか」
「デムーロJも酷かったですね」
「所詮イタリア人よ。はなから根性ってもんがねえんだ。あったら気のないレースすんならあんちゃんの方がナンボかマシだぜ」と自分の拙い予想は天井裏に上げて、ジョッキーをこき下ろすのはいつもの風景である。

「マスターさん、当たったんですから競馬は辞めないですよね?」
「これが当たりだなんて、ど素人のオメー達ならともかく俺には云えねえが、もうちっと足掻いてみっか。木曜日の『山の日』からは沖縄に逃亡すっからよ。頭をチーと冷やしてくるわ。しかし何だな競馬ってえのはいいな〜」
「何でですか?」
「だってよ〜、テレビでガンガン流れてるオリンピックなんて、一回負けたら、4年後までリベンジするチャンスがねえんだもん。それに比べりゃ〜10分置きにチャンスがある訳だし、開催は年がら年中あるしよ。『麦は踏まれて強くなる』で、少々負けたぐらいで塩タレてたらアスリートの皆さんに顔向け出来ねえよ」なんだとか。

銅メダルを逃した田代未来ちゃん。
うんと泣けばいいと思う。
4年後のリベンジ楽しみにしてますよ!