北新地競馬交友録

サヨナラだけが人生か?

勧君金屈巵 
満酌不須辞
花発多風雨
人生別離足

干武陵の漢詩である。
文豪井伏鱒二が日本語に訳した文章は、少し歳を召した方ならどなたでもご存知であろう。
『この盃を受けてくれ 
どうぞなみなみつがしておくれ
花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ』

ここ数日、花冷えと云うにはまだ少し早いが寒さがぶり返している。
にも関わらず、大阪北新地は結構な人出。
徒党を組んだサラリーマンの方々が、通りの真ん中を我が物顔で闊歩している。
送別会が佳境に入った。
そうサヨナラの季節なのである。

70億人とも云われる地球の人口。
その中でJAPANに産まれ、しかも同じ会社に勤め、肩を組んで惜別の酒に酔う。
これを縁と云わずして、何と云えばいいのか。
置き換える言葉はあるまい。
サヨナラは辛いが、その向こうにはまた新たな出会いがある。
諸兄!嘆くことなかれ!だ。

「マスターさん!『雄太貯金』増えましたね。え〜現在の残高ですが55万3千円となってます」
熊本天草出身、スターウォーズのヨーダとクリソツの◯原さんが、ケロケロケロッピーの手帳を眺めて満足そう。
「どこが増えてんだよ!目標は三菱のMRJ買って函館競馬場に乗り込む事だ。50万ポッチじゃスズキのアルトも買えやしねえよ。あ〜やだね〜志しの低い人間はよ〜」
本当は小躍りしたいぐらい嬉しいくせに、カッチョ付けているマスター。
そもそも、本人の貯金が50万あるかどうかも甚だ怪しいんだから、相変わらず漫画みたいな馬券オヤジなのである(((o(*゚▽゚*)o)))

「今週は『雄太貯金』どうするんですか?モズライジンも出ますよ」
JAPANで3番目にオツムのいい学校を出て、幼稚園のキッズ達でも知っている有名企業に勤めているK君。
「おう!よくぞ聞いてくれた。今週もこれぞ!と云う馬がいる。土曜日、中京9Rヴレクールだ。先週雄太が開業したばかりの斎藤崇史厩舎のゴールドエッセンスを、8番人気で1着に持って来て、ズンナイ穴を開けたの覚えてんだろ。あれが斎藤崇史厩舎の初勝利よ。開業一発目は3月アタマの阪神開催で、リーディング上位の某ジョッキーを乗せて必勝体制。2番人気だって云うのに堂々の10着で、斎藤調教師がショックのあまりしゃがみこんだとかこまなかったとか。あったら騎手乗せてどうすんだ、調教師は必死のパッチッチでも。上位ジョッキーにとっちゃ〜数ある乗鞍の内の一つに過ぎねえよ。温度差があり過ぎら〜ね。その点雄太は苦労人だからよ〜気合いの入り方がまるで違う。第一…………………」

ほっときゃ、1時間でも2時間でもべしゃりまくるであろうマスター。
◯原さんもK君も「あ〜また始まった」と聞いているふりをして、頭を定期的に上下運動。
まるで張り子の虎!べこ人形なのである。
「雄太も開業したばかりの斎藤厩舎との縁に味噌付ける訳にゃ〜いくまいて。偶数番なら更に良し!だが4枠は悪かねえ。ドン!とスタートを決めて猫真っしぐらよ。元々このクラスでは力上位で、託して安心◯東健託だ。『雄太貯金』から複勝に10万3千円。相手もそこそこ揃ってるから、1番人気になっても150円はつくだろう!」

春はサヨナラだけじゃない!
出会いの季節だとマスター!
中谷J宜しくお願い致しまス!