北新地競馬交友録

麗しき国の麗しき競馬 その4

神が人間に与えた最大の贈り物が『忘却』とはよく云われる事である。
穴があったら入りたいぐらいの恥ずかしい事や、悲しい事は何故か時間が経つと、記憶の中でセピア色になり、やがて風化し忘れ去られる。
だからこそ、人間は生きて行けると云うのだ。

反対にいい事と云うのは、いつまでも記憶の中で風化する事はない。
それは競馬でも同じで、やられたレースは忘れるが、儲かったレース、お世話になった馬やジョッキーは鮮明に覚えている。
「このメンバーならゴールドシップが100回走れば99回勝つ。配当は安いが買うように」
「は~い」

マスターがスタッフを初めて競馬場に連れて行った『宝塚記念』
そのゴールドシップがグレた。
どうにも気まずいムードを振り払ったのが、京都馬主協会馬主S澤さんのボクノナオミとスグルちゃん。
最終レース『リボン賞』で前付けから抜け出そうとする果敢なレースで、5番人気ながらも3着を確保。
マスター、スタッフ全員が、最終的にはプラスで帰ると云う快挙の立役者だ。

「なんでこんな人気がねえんだ?7番人気、単勝20倍とはヨダレが出るぜ。複勝が3.0ー4.9、モーニンとのワイドで7.9ー8.9も付くなんて。遅れて来た大物モーニンは強いだろうが、リボン賞と同じ阪神1400。
ここで買わなきゃ何時買うってんだ」
阪神10R『新涼特別』
「単複頑張れ馬券に5千円づつ。モーニンとのワイドに2万6千円だ!」
なんの事はない験を担いで、吉と出た9Rと全く同じ買い方と金額Σ(゜д゜lll)

自信満々で実況中継を聞いていたマスターだったが、ボクノナオミの名前がまるで出て来ない。
「モーニン強い!これで無傷の3連勝!」
(馬場幸夫オーナー、松山Jおめでとうございました)
狐につままれたようなマスター(≧∇≦)
ニャンと!名前が出たのが、たった1回とはマジ泣けてくる。
「こんなことが許されていいのか 」と怒ってみても、どうする事も出来ゃしない。

マスターの携帯が鳴ったのは、ダイビングボートが那覇の港に帰り着いた頃、競馬友達のK君からだ。
「どうしちゃったんでしょうね。一瞬伸びるかなと思いましたが……..」
「ナオミちゃん、ご機嫌が悪かったんじゃねえの」
「マスター、いやにあっさりしてますね?」
「仕方ないじゃん、お世話になった馬を買ってダメなら鉾を収めるしかねえよ。これも競馬だ」

強いと思う馬が不利のないレースをして勝つのが麗しき競馬なら、心底応援する馬を買って負けるのも麗しき競馬とマスター。
珍獣の割りにはいい事を云う。
ナオミちゃん、次走は頑張ってよ。
半沢直樹風に云うなら倍返しだ!
財布を落として汗ビッショリも、麗しき国の人の善意に助けられて始まった『シルバーウィーク』の競馬が終了した。

皆様、シルバーウィーク競馬の成績はいかがでしたか。
今週も頑張って参りましょう!