北新地競馬交友録

マスター即死を喰らうの巻 その4

『全国高等学校野球選手権大会』が始まった。
炎天下を物ともせず、白球を追い続ける球児達の姿には胸を打たれるし、郷土の誇りでもある。
◯原剛、熊本県天草出身68歳曰く、
「今年の九州学院は強いで」らしい。

食堂からおっとり刀でウインズに取って返した、マスターとK君。
その横には◯原さんが、いつの間にかへばり付いている。
「ビックリしたな〜。5Rの6番。複勝で1100円やで」
「中谷雄太騎乗のラッキースピードだ。6番とか云うな。馬名かジョッキーの名前を云え!名前をよ〜」
また、また、マスターに叱られる◯原さん(≧∇≦)

競馬場やウインズで番号をシャウトしているのは、大概が年寄り。
「9差せ!8行かんかい!2何しとんじゃ」
これは確かに良くない。
ボケ防止の為にも是非とも馬名ないしは、ジョッキーの名前を覚えて欲しいと思う。

「で、お兄さん6Rは何買うの?」
「その大穴を開けた雄太が乗る『浜の番長』の愛馬リーゼントフォルテと、すぐるちゃんのジュンゲル一本勝負よ」
「9番と2番か〜。4番人気と1番人気やね」
「おい!さっき注意しただろが…….」
「あ、ジュ、ジュ、ジュンゲル。云いにくい名前やな〜」

「マスター、馬連ですか?」
「ば、馬鹿野郎!そんな危ない馬券買えるか。もちのロンでワイドだ。5倍付きゃ〜上等も上等、福島上等カレーよ」
すぐるちゃんのジュンゲルは、向こう正面で押っ付け、押っ付け。
危ない!と思ったがまるで関係なかった。
エンジンが掛かれば楽勝だ!
(幅田様おめでとうございました)

問題は雄太のリーゼントフォルテ。
ゴール前きわど過ぎて…………。
ニャンと!鼻差の4着。
「こんな事があっていいのか!」
頭を抱えるマスターの横で、「9惜しかったな」と◯原さん。
マスター、ギロっと睨んだものの無言。
どうやら怒る元気もないようで….。
「顔洗ってくる」

トイレットから返って、7Rは流石にすぐるちゃんは買えないとケン。
8Rは頼みのオトコギマサムネが……。
9Rがまさかの9着。
10Rがまたまた吹っ飛ぶ。
メイン、関東から狙いすまして来た堀厩舎も5着。
土曜日4勝のすぐるちゃんのリズムが、打って変って良くないもんだから……….即死の連続だ。

「マスター、最終はどうしますか?」
「どうもこうも、タマがないんだよ!タマが。こちとら6タコだぜ」
「……….軽く飲んで帰りますか?◯原さんもどう?」
「喜んで!」
K君、チラッとマスターを見ながらのお誘い。
「好きにすれば」

毎週、土曜日と日曜日に、板宿のアパートから3千円を握りしめて、神戸元町ウインズに来る◯原さん。
「来週から、高校野球が始まるので忙しくなりますわ。競馬と高校野球が無かったら、ワシ何の楽しみもないですから」
「へ〜、俺は競馬がなきゃ、マジでホッとするけどよ」
完全に白旗上げちゃったマスター。
来週は頑張ろう!