北新地競馬交友録

初競馬!

この世の中で、競馬ほど面白いものはないと思っているマスター。
競馬未経験者を誘って競馬場に連れて行く事は万度だが、1番大切なのは当てて貰う事。
人混みに揉まれて、電車を乗り継いでわざわざ競馬場まで行ってたのに、「全然当たらない!」じゃ、2度と行く気にならないのは、当たり前田のクラッカーだ。

「え〜注目!9Rの皆生温泉特別は、13番オヒアの複勝がいい。複勝と云うのは3着までに来たら当たりって事だな。まず、阪神を塗り、次に9Rを塗る、そして複勝を塗って、13番と金額を塗れば出来上がり。これで自動的にマニーが儲かる仕組みだ。判ったか?」
「は〜い!」と可愛く返事をしたのは、マスターのBARをお手伝いしている女子大生のTちゃんと、Mちゃん。
もちろん競馬場初参戦だ。

「え〜またまた注目!10R花の道Sはだな。フランスの至宝ルメールJが乗るサンライズネガノの複勝を塗りなさい。3着までなら、ルメールJがフランス国歌ラ・マルセイエーズを歌いながらでも大丈夫」
「は〜い」
なんの事はない、前に行けて粘れそうな馬の複勝を教えているだけ、競馬ファンからすれば、「そんな馬券なら小学生でも買えるわい!」てなところだろうが、これが当てて貰うにはベストセレクション。
(良い子の皆さん、馬券は20歳になってからね。法律で決まってます)

そして迎えた『宝塚記念』
「マスター!どれを塗ればいいんですか?」
2連勝で気を良くした女子大生ペア。
「早く教えて〜」とマスターを急かすんだが、「う〜ん」と唸ったままの思案六ポウ。
前に行けて堅い馬がいないのであ〜る。
自分が損するのは仕方ないが、スタッフに損をさすのはいたしい。
出した結論は、「15番のゴールドシップを塗りなさい。ただし〜今回は複勝じゃなくて単勝。100回走ったら99回は勝つはずだ」
「は〜い」

その100回に一回の事が起こっちゃったΣ(゚д゚lll)
阪神競馬場が悲鳴と怒声に包まれる。
ウルトラ出遅れだ。
「頑張れ!頑張れ」
TちゃんとMちゃんが声をからせて応援するが、あれで来たら化け物。
9Rと10Rで転がった馬券がゴミになっちゃった。
「なんじゃ!あれは!頭来たぜ。競馬ファンがこれで100万人は減った」と嘆くマスターだが………….。

「まあ〜競馬って云うのは、お馬さんが走るんだから、あ〜云う事はある。うん、稀だがな。最終レースは、京都馬主協会理事S澤さんのボクノナオミの複勝で勝負だ。ほれ、さっき2人とも馬主さんにご挨拶しただろ。今日は馬名の由来、奥様のナオミさんもお見えだ」
『宝塚記念』での失策をカバーすべくスタッフにレクチャーするも、疑り深い視線を投げかける二人。
顔に「大丈夫かな〜?」と書いてある。

「浜中!スグル!そっから来い!」
S澤さんの怒声が馬主席にこだまする。
その声の大きさと云ったら半端ない。
一躍時の人って感じ。
さすがスグルちゃん、ガッチリ3着を確保して260円の配当。
マスターもTちゃんも、Mちゃんも万歳三唱だ。
「2人とも競馬はどうだった?楽しかったか?」
「は〜い!お馬さんは可愛いし、ドキドキするし、儲かっちゃうし最高で〜す」
「うん、そうだな。競馬最高!」

マスター『宝塚記念』で自分がおっ死んじゃったくせに…….全く持って馬鹿じゃなかろうか(笑)
傍から見たら漫画だが、スタッフの喜ぶ顔を見れて満足なんだと。
「え!マスター競馬場行くんですか。僕も連れて行ってください」
「だ〜め!いきなりAKBの話しとかされたら厄だ。なんせ空気読めねえんだから。俺が恥をかくのは必定よ」
競馬友達K君を冷たくあしらっての久々の阪神競馬場。
それなりに楽しかったみたいで、ヨシ!としようか。