北新地競馬交友録

『口取り物語』VOL6 応援の作法 その1

『雨垂れ石を穿つ』
ニャンとも難しい諺だが、一定の場所に落ちる雨垂れは、長い間に下にある石に穴を開けるという意味から、小さな力でも根気よく続ければ成功することの喩え。
まあ、世の中大概の事はこの諺通りだし、努力はそれなりに報われるのが常だが……。

「あ!馬鹿野郎!イン付けよ!何!大外ぶん回してんだ。駄目だ◯◯は。あれじゃ〜馬が可哀想ですよ」
競馬場の馬主さんの横で、文句タラタラのマスター。
北新地で馬主さん達が集うBARを営んでいる関係で、応援に万度駆け付けるんだが…….競馬は難しい。

「岩田Jが乗ってたら掲示板はありましたよ。なんですかあの乗り方は。マジで嫌んなっちゃいますよ。道で会ったら……….」
「…………………」
無言の馬主さん。
ジョッキー云々より、馬の力が足りないのを、判っておられる。
とても、とても切ないのであ〜る。

何年も個人馬主をなさっておられる方は、気質的にはMかも知れない。
好走を1回する間に、悲しいレースが5回は普通に続くのが競馬。
うん千万だ!うん億だって、バリバリ血統の馬を走らせている訳じゃないから、未勝利は勝てても、上のクラスでは厳しい闘いが続く。

『雨垂れ石を穿つ』なんて、簡単な構図じゃないのが馬主稼業。
一生懸命セリに参加して、牧場を回って、厩舎に様子を見に行って。
努力しているのに結果に直結しない。
そんな馬主さんと一緒に応援する場合、マスター曰く、それなりの作法があるんだとか。

その話しはまた明日。

皆様、お付き合い宜しくお願い申し上げます。