北新地競馬交友録

マスター討ち死にす! その2

平成13年からの『異次元の金融緩和』によって、お金は世の中にバンバン流れている。
バット!金利は安い。
村上龍的に云うならば、『限りなくゼロに近い金利』てな塩梅だ。

「マスター!5万以上儲かったじゃないですか。これでダービー15万張れますよ。ワイドなんでしょ、ドゥラメンテとリアルスティール。2倍は付きますから………ひゃ〜30万だ」
「ば、馬鹿野郎!君は銀行金利がいくらか知ってっか?定期で0.3%だぞ、0.3%。たかだか2分半にも満たない時間で倍になんだぜ競馬は。年利にしたらナンボだ?天文学的数字よ。そんな簡単に当たる訳きゃねえじゃんか。人のマニーだと思って、15万張るなんて軽々しく云うんじゃねえよ!」

因みに15万一年間預けたとして、利子は僅か450円。
吉牛で並盛りと温泉卵を頼んだらお終い。
味噌汁を付けたら「お客さん!お代が足りませんぜ」と相成る。
ポリスメンのお世話になるのは必定だ。
そんな時代に2分半ちょい足らずで倍。
当たればこんな美味しい事はないのだが.、そうは問屋が簡単に卸してくれないのは承知の助のマスター。

「本日のスグルちゃん鉄板レースは京都5R。
ジェルブドールが負けるような事があれば『おはよう朝日』でNEWSになる」
鮫島Jの驚異的な粘りで肝を冷やしたものの、3連複をGETしたマスター。
勝ちを全部『ダービー』に上乗せしてつぎ込むのかと思いきや………..案外意気地がない。
なんせ、今まで痛い目にあった数は、自分の両手、両足じゃ足りずに、そこいらを歩いてるおばさんの手足まで借りる始末だから、いいわ!いいわ!でドカンと張る根性に欠ける。

「よ〜し!ドゥラメンテ確定!福永来い!伸びろ!」
直線、異次元の金融緩和ならぬ異次元の脚で抜け出したドゥラメンテの勝利は間違いなし

「福永!福永!福永!…….」半狂乱で叫ぶマスターとK君。
なのに、なのに、まるで伸びなかった。
『男は辛いよ』の寅さんがタンカ売いをしていた、パンツのゴムより伸びなかった。

ニャンと!勝つどころか3着もナシの4着。
哀れマスターの諭吉ドン一個小隊は全滅だ。
「福永の奴なにやってんですか、あれでリーディングなんてよく……….」
公開を憚られるような発言を、唾を飛ばしながら、口を尖らせて連発するK君。
冷静になったマスターが、「ありゃ〜距離だ。苦しがって右へ左へヨレまくってた。福永Jのせいじゃねえよ」
さすが負け慣れてる人間は諦めが早い。

マスターの『ダービー』は終わった。
討ち死にと云えば討ち死に。
バット!全額張り付けなかったのは不幸中の幸いだ。
『長篠の戦い』で云えば、命からがら甲斐まで逃げ帰った武田勝頼と云うべきか。
もっとも、その勝頼も7年後天目山で自害するんだが…….。

7年後どころか、来週あたり「こうなりゃ、腹かっさばいて…..」の可能性大。
東大文1より難かしい『安田記念』がやってくる。
神戸にある世界一のコンピュータ『京』を持ってしても、謎は全て解けた!の名探偵コナン君をしても………….。
勝てそうな馬が4〜5頭はいるんだから、「困った、困った、コマドリ姉妹」だ。

神よ!マスターにご加護を。
え〜い!オマケだ。
フォースと共にあらんことを!