北新地競馬交友録

『口取り物語』VOL2 3年目の涙 その3

絶縁。
Wikipediaによると、「交友関係、師弟関係を断つ事を云う」とある。
小学校の授業で習ったのを覚えている方もいるだろうが、人間は社会的生き物。
人との繋がりなくして、生活を営む事は出来ない。
哀れその絶縁宣言をされたのがマスターだ。

3年目の初勝利。
馬主さん、その奥様と手に手を取って大喜びしたのが前回までの話し。
「お〜い!全員集合。今から口取りに行くからな。オメー達あんましハシャギ過ぎんじゃねえぞ」
「は〜い!」

サラリーマン時代も含めると、北新地歴は30年を軽く越えるマスター。
たこ焼き屋の大将からクラブホステスまで、交友関係は極めて広い。
「100回走ったら99回は勝つ!」
「祝い事は賑やかなのが1番!」
「女はキレイどころに限る!」

北新地のホステス達を密かに呼び寄せていた。
勝てば口取りを華やかに彩り、万が一負ければ何もなかったかのように撤収する。
そんな作戦だったのだが見事勝利。
勝馬馬主専用エレベーターに、馬主さん、奥様、マスター、そしてホステス達。

とにかく興奮状態なんで、なんでキャピキャピしたのが一緒にエレベーターに乗っているのか判らない奥様。
さすがにウィナーズサークルに並んだ時に気が付いた。

どぶろっくじゃないが、「もしかしてだけたど〜 もしかしてだけど〜 これってホステスじゃないの〜!」
写真撮影が行われている間は、無理に笑顔を作ったものの………….。
明らかに不機嫌モードに突入。

馬主さんの名誉のために云うならば、これはマスターの一存。
責めを一身に負うのはあたり前だ。
空気を察したマスターが「どうもすいません。出しゃばった事をしまして」

薄くなったオツムを深々と下げるも、奥様プイと横を向いてしまった。
その怒りに満ちた顏の怖いの怖くないのって。
帰りの車の中で、馬主さんに「あんな人とは今後一切付き合わないで」と云い放った奥様。
絶縁宣言だ。

3年目の涙。
感動のフィナーレが一転。
観音様を夜叉に変えたマスターに弁解の余地はない。
その絶縁宣言が撤回されるのに要した期間はなんと1年。
マスター!しっかりせんかい!

次回『口取り物語』はミホノブルボンの背に乗って。
お楽しみに。