北新地競馬交友録

メイショウドトウの走る訳

『らいおんハート』by すまっぷ

君はいつも僕の薬箱さ
どんな風に僕を癒してくれる
笑うそばから ほら その笑顔
泣いたら やっぱりね 涙するんだね

ありきたりな恋 どうかしてるかな

君を守るため そのために生まれてきたんだ
あきれるほどに そうさ そばにいてあげる
眠った横顔 震えるこの胸 Lion Heart

朝のワイドショーは、オツムの弱い人間を相手にある事、ない事まくし立てて煽るのが常套手段。
そのワイドショーが、最大級の賛辞と共に哀悼の意を表したのが、ジャニー某である。
1999年不埒な行為を記事にした『週刊文春』を名誉毀損で訴えたが、ま〜出るは、出るは被害に遭った証人が。
とんでもないオヤジなのである。

そのとんでないオヤジが手塩に掛けて育てたすまっぷが、『らいおんハート』でスマッシュヒットを飛ばしたのが2000年の事だ。

「この『中京記念』は幸広のエリモエクセルの引退興行だ。ロドリゴデトリアーノの最高傑作で『オークス』も強かったが、なんてったって去年の『中京記念』だろう。スタートで安目を売って、第3コーナーでも最後方という位置から、直線、大外一気!一気!の差し切り勝ち。並みの馬に出来る芸当じゃねえぞ。競馬はデジャブだ。本場所のG1じゃそうそうないが、地方場所のGクラスは、『な〜んだ、またこの馬か。去年勝ってんじゃん』なんて事が万度。JRAもここで花道を飾らせて盛り上げたいとの目論見はミエミエ中尾ミエだぜ」とひとくさり。

「エリモエクセルを買うんですかってか?甘い!ユーは甘い!博多あまおう並みに甘い。ミーの狙いはズバリ、酔っ払いのヤスヤスが乗るメイショウドトウだ。普段の行いが災いしたのか、デビュー以来11戦目にして初めて手綱を幸四郎に持ってかれた。帰って来〜いョ!松村和子で戻った手綱で不細工なレースをするはずがねえ。なんせデビュー戦では、38度の高熱を押して特攻出撃したぐれぇ惚れ込んでんだ。人気も3番人気と手頃だろう。単複でいてこます」聞かれてもいないのに長講釈はマスターの悪い癖である。

「第4コーナーから直線!先頭はアンブランスモア!軽ハンデ!メイショウドトウが外から襲いかかる!」
「よ〜し!酔っ払い差し切れ!」とても激励とは思えない怒声を上げるマスター。
「メイショウドトウ抜けたか!外からブリリアントロード!内からセイウンエリア!先頭はメイショウドトウだ!メイショウドトウ!勝ったのはメイショウドトウ!エリモエクセルは7.8着!引退レースを飾る事あたわず!」
1着 メイショウドトウ 安田康彦
2着 ブリリアントロード 山田和広
3着 アンブランスモア 須貝尚介

「よっしゃ!よっしゃ!の角栄さんだ。単勝が770、複勝が300も付いたぜ。ヤスヤスも真面目にやりゃ〜出来んだ。まあ〜こりからはドリンクを控えて精進しろと云っても、聞く耳は持たねえだろうがョ。ペースが落ち着いたんでエリモエクセルにゃ〜気の毒なレースだった。バット!世の中そんなに甘くねえって事だ」
そっくり返って、後ろにひっくり返えるんじゃないかと思うほど威張っているマスター。
日頃、どれだけヤラレているかが伺い知れる梅田ウインズ午後4時前である。

メイショウドトウと安田康彦Jとのコンビは、その後、道路交通法違反の現行犯で逮捕され、2ヶ月の騎乗停止期間の3戦以外11戦全て。
中でも、宿敵テイエムオペラオーを『宝塚記念』で下し、漢泣きに泣いた話は、チイとばかし年季の入った馬券愛好家なら知らぬ者はいまい。
すまっぷが「君を守るため そのために生まれてきたんだ」と歌い、メイショウドトウが「ヤスヤスさんを漢にするため そのために走るんだ」と、コンビの再結成に花を添えた『中京記念』
もう19年も前の事である。